わずか2年間でも…森唯斗がDeNAに与えた“財産” 三浦監督が感嘆「どんなときも変わらず」

仲間から胴上げされるDeNA・森唯斗【写真提供:産経新聞社】
仲間から胴上げされるDeNA・森唯斗【写真提供:産経新聞社】

ソフトバンク→DeNAで12年間、森唯斗「いい野球人生だったなと思います」

 涙はなかった。「12年間野球ができると思っていなかったので、いい野球人生だったなと思います」。DeNAの森唯斗投手が30日、横浜スタジアムで行われたヤクルト戦で引退試合に臨み、9回の1イニングを無失点。試合後には引退セレモニーが行われた。慕われる人柄を象徴するかのように、ファーム選手や今は他球団でプレーするかつての同僚らも集結。晴れやかな表情で、プロ野球生活に終止符を打った。

“最後の瞬間”はネクストバッターズサークルで迎えた。通算486試合目の登板を果たした直後、9回に1点差に迫ってなおも2死一、二塁から、打席には筒香がいた。「ゴウが決めてくれと思いながら、少し『回ってこい』と思っていました」。仮に同点となれば、延長10回も続投だった。レガースをつけて逆転を祈ったが、一歩及ばなかった。

 2023年限りでソフトバンクを戦力外となり、DeNAにやってきた。新天地では2年間で計15登板にとどまったが、与えた影響は大きかった。静かに出番を待ちながら手を抜くことなく汗を流す姿に、慕う後輩は多かった。

 三浦大輔監督も「うちに来て2年という短い期間でしたけど、本当に野球に取り組む姿勢、ホークスでの経験、たくさんのものをDeNAに与えてくれたと思います。どんなときも変わらず、横浜スタジアムでも横須賀のDOCK(2軍施設)でも、誰が見ている、いないに関係なく自分のやることに集中して毎日取り組んでいました」と頭を下げた。

ファーム選手、かつての仲間たちもハマスタ集結「すごいことですよね」

 今季は2軍暮らしが続き、8月28日阪神戦(横浜)が今季初登板だった。ようやく巡ってきた出番で、5回2失点の力投で白星を掴んだ。それも、日々の努力を怠らなかった証だろう。指揮官も「投げるチャンスが少ない中で苦しんでいるところも見てきましたけど、それでも本当に変わらず毎日取り組んでいましたし、試合に出ていなくても出ている選手を鼓舞して、成績以上に大きなものをチームに与えてくれた選手です」と感謝した。

 2013年ドラフト2位でソフトバンクに入団し、新人だった2014年から7年連続で50試合以上に登板と鉄腕ぶりを発揮した。2018年からは守護神として3年連続30セーブ以上をマークし、2018年には最多セーブのタイトルを獲得。チームは4度のリーグ制覇を成し遂げるなど“常勝軍団”の一員だった。その“イズム”を惜しむことなく、DeNAの若手に注入し続けた。

 127セーブ&106ホールドという輝かしい成績を誇る右腕の最後の勇姿を目に焼き付けたのは、チームメートだけではない。かつてともに戦った甲斐野央投手(現西武)、高橋礼投手と泉圭輔投手(ともに現巨人)ら多くの仲間達も駆けつけた。「すごいことですよね、ありがたいです」と森唯。駆け抜けた日々を象徴するかのような、盛大で華やかな幕引きだった。

(町田利衣 / Rie Machida)

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