異例の電撃発表に滲む危機感 辞任公表から10時間後…球団社長が明かした“事情”

午前中に吉井監督の辞任発表、午後には後任人事も発表
まさかの“電撃発表”だった。ロッテは5日、午前9時に吉井理人監督の辞任を発表。午後2時から本拠地のZOZOマリンスタジアムで行われた今季最終戦のソフトバンク戦を終えると、今度は高坂俊介代表取締役球団社長が報道陣に対応し、同日午後7時にサブローヘッドコーチの監督昇格を公表した。複数年契約を結ぶ見込みで、8日に就任会見が行われる。
「吉井監督本人から辞任の申し出があり、それを受け入れました。後任監督については、サブローヘッドコーチに就任を要請しまして、既に承諾をいただいています。サブロー新監督は2年半、チーム作りにかかわっていただき、一定の成果が出ている。特に若手野手の活躍が目立ちます」
2022年、吉井監督の就任が発表されたのは10月7日。井口資仁前監督の辞任発表から5日後だった。今年6月、2軍監督から配置転換されたサブローヘッドの昇格は“既定路線”だったとはいえ、今回の素早い対応には球団の危機感が透けて見える。
今季は開幕戦だった3月28日からのソフトバンク3連戦(みずほPayPayドーム)で3連勝と好発進。しかし以降は外国人選手の不振などで波に乗れなかった。最終的には56勝84敗3分けで借金28となり、8年ぶりの最下位。パ・リーグの5球団に負け越し、5位・西武にも7ゲーム差をつけられた。
2021年に「Vision2025」を掲げ、常勝軍団の構築を1つの目標に掲げてきたが、結果的に5年間でリーグ優勝を達成できず。高坂球団社長は「千葉ロッテマリーンズは長らく優勝争いに絡めない。Aクラスというよりは、どちらかというとBクラスに定着する機会が多かった。2005年に日本一、2010年には3位から下剋上で日本一がありましたけど、いい状態が長く続かない」と振り返る。
「今回区切りの年で、Visionを成し遂げることができなかった。うまくいかなかったときに、大幅なリセットをしてしまい、しっかり振り返りできないままに、次のシーズンに向かうことを何度か繰り返しています。これだと、失敗の経験を次につなぐことができない。組織上の大きな課題はこれにあると思っています」
「日本一にするという大きな夢の実現のために勇往邁進」
まずは2005年以来遠ざかるリーグ優勝へ向けて、少しでも早く態勢を整えたいという考えである。今季の“失敗”を来季に生かすため、チームを熟知するサブローヘッドの昇格。コーチ人事も進めており、球団はサブロー新監督の「この愛するチームを日本一にするという大きな夢の実現のために勇往邁進してまいります」というコメントを広報を通じて発表した。
一方の吉井監督はこの日、ベンチ入り野手全員を起用。「最後なので全員出そうと思いました」。3点ビハインドの展開にもかかわらず9回には今年セットアッパーに定着した高野脩汰投手が登板。1死一塁の場面では新クローザーの横山陸人投手を送り込み、吉井監督自らマウンドに足を運んでボールを手渡した。それが“最後の仕事”。ベンチに戻ると感極まった表情を見せた。
試合後のセレモニーでは「本当はもうちょっとやりたかったけど」と未練をのぞかせる場面も。報道陣から辞任の経緯を問われると「今季の結果が全て。若い選手がいい成績を残していても、勝ってナンボの世界。結果が出ていない責任を取ります」と説明した。
3年間の監督生活については「それぞれのシーズンに色があって楽しかったです」と回顧。将来的に他球団を含めて監督就任のオファーがあったらどう対応するかの質問には「やられっ放しで終わったので、チャンスがあれば……」と色気を見せた。
監督人事が一気に動いた1日。現役時代に「つなぎの4番」として2度の日本一に牽引したサブロー新監督には、指揮官としても経験を“新チーム”につなぐ役割が期待される。若手野手育成の実績は残した。後はいかに勝利に結びつけるか。バットマンとして勝ち方を知る男に、チーム再建のタクトを託す。
※1パラグラフ目の第6段落にある高坂球団社長のコメント内容を10月6日午後5時44分に加筆・修正しました。お詫びして訂正いたします。