イチロー氏に「嫌われるんじゃないか」 異色のキャリア…MLBで奮闘する福田秀平の現在地

5月からマリナーズの特任コーチ兼コンサルタントとして活動
毎日が刺激的だ。ソフトバンク、ロッテでプレーした福田秀平氏は、5月からマリナーズの特任コーチ兼コンサルタントとして活動。米国での選手経験、プロ野球での指導経験がない中、異例となる米国でのコーチ就任だった。
「毎日が学びしかないです。日本と米国の野球の違いだったり。元々メジャーリーグが好きで見ていたんですけど、実際に来てみて、さらに勉強になったところは多いです。今年1年でいろいろなことを経験させてもらっています」
メジャーだけでなく、マイナーやドミニカにある球団アカデミーまで巡回した日々。プロ野球で通算785試合に出場した36歳は充実感でいっぱいだ。
2024年まで現役選手だったとはいえ、いきなり異国でのコーチング。通訳はつかず、当然、選手との間には言葉の壁もあった。福田コーチは事前に選手から聞かれそうなことを予測してノートにメモ書き。それ以外の質問には「ちょっと待ってね」と英語を調べ、地道にコミュニケーションをとっているという。
「もちろんすぐにはうまくならないと思いますけど、毎日コツコツと勉強しています。これだけ勉強するのは高校受験以来です(笑い)。米国に来てみて、改めて異国の地で戦っている方々の凄さを実感します」
練習後には球団へ英語のレポートを提出する。「かなり苦戦しています」というが、その表情はどこか楽しそうだ。
イチロー氏とは本拠地ロッカーが同じ部屋に「今後に生かしていきたい」
マリナーズには会長付特別補佐兼インストラクターを務めるイチロー氏がいる。本拠地T-モバイルパークではロッカーが同じ部屋に。「憧れ」だったイチロー氏を質問攻めしているという。
「本当に嫌われるんじゃないかくらいにイチローさんに質問しています。ずっとそれに対して丁寧に受け答えしてくれるので。本当に感謝しています。(学んだことは)たくさんありすぎて話せないんですけど、メモにも残しています。今後に生かしていきたいです」
9月末のレギュラーシーズン最終カードはドジャースが相手だった。3連戦初戦の朝、球団スタッフから「オオタニとヤマモトから打った本塁打映像を見せてほしい」と連絡があった。
「なんでだろうと思ったんですが、まずコーチミーティングでドーンと映像を出されて。『もうないかな?』と思ったら野手ミーティングでも映像が流れて。めちゃくちゃ恥ずかしかったです。でも、今となってはいい思い出です。こうやって話のネタにもなるので。彼らの活躍を見ると自分の励みになります」
今季のマリナーズはイチロー氏が新人だった2001年以来24年ぶりの地区優勝。初のリーグ優勝、ワールドシリーズ制覇を目指し、地区シリーズではタイガースと戦っている。
「僕は何もできてないですけど、本当にこんな貴重な機会に立ち会わさせてくれて。ここに立つことができて本当に光栄だなと思います。まずはアメリカの野球を勉強して、しっかり学んで。マリナーズに少しでも貢献できるように頑張っていけたらと思います」
36歳の新米コーチは目を輝かせていた。
(小谷真弥 / Masaya Kotani)