侍ジャパン強化試合になぜ捕手4人? WBC連覇の鍵握る“対応力”…井端監督の心配

11月15、16日の侍ジャパンシリーズに4人もの捕手が選出された理由
11月15、16日に東京ドームで行われる「ラグザス 侍ジャパンシリーズ 2025 日本vs韓国」の出場選手が8日、都内のホテルで発表された。野球日本代表「侍ジャパン」にとって大会連覇がかかる来年3月の第6回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)へ向けて、日本のプロ野球に未導入のピッチクロック、ピッチコム、拡大ベースなどへの対応が課題となる。
侍ジャパンの出場選手発表会見では、韓国戦を前に11月6日から12日まで、宮崎県のひなたサンマリンスタジアム宮崎で強化合宿を行うことも発表された。侍ジャパン強化委員会の中村勝彦委員長(日本野球機構事務局長)は「(強化合宿では)ピッチクロック、拡大ベースなど、WBCへ向けた調整に重点が置かれる」と強調。侍ジャパントップチームの井端弘和監督も「日本に無いルールがあるので、慣れて試合で生かせればいいと思います」とうなずいた。
現状でMLBにあって日本プロ野球に無いものと言えば、ピッチクロック(投手はボールを受け取ってから、走者がいない場合は15秒以内、走者がいる場合は18秒以内に投球動作を開始しなければならず、時間をオーバーした投手にはボールが宣告される)、ピッチコム(バッテリーが発信機と受信機を通して球種やコースを伝達する)、拡大ベース(選手の交錯を減らすため、2023年から一、二、三塁に適用)など。来年のWBCではMLBのルールが採用される見込みなのだ。
11月の韓国戦もMLBルールで行われる。宮崎強化合宿にピッチコム機器、拡大ベースを取り寄せ、ピッチクロックに則した練習も行われる。「各選手に経験してもらって、日本のプロ野球との違いを確認してもらえればいい。今までと違うところで怪我が起こらないようにしたい」と井端監督。韓国戦2試合に4人もの捕手(オリックス・若月健矢、巨人・岸田行倫、阪神・坂本誠志郎、ヤクルト・中村悠平)が選出されたのも、WBCへ向けて、なるべく多くの投手・捕手に「ピッチクロックやピッチコムを経験しておいてほしい」という思いがあるからだ。
WBC使用球=MLB公認球への対応も問題、既に韓国戦出場選手へ配布済み
日本のプロ野球にピッチクロックがなかなか導入されないのは、時間短縮が金科玉条のMLBと違い、日本の野球は“間(ま)のスポーツ”であり、投手が受け取ってから投げるまでの時間に緩急をつけるのも技術のうちとされてきたため、選手サイドの反対が根強いからと言われる。
一方、韓国プロ野球は既にピッチクロック、ピッチコム、拡大ベースを導入済み。日本のプロ野球でプレーする選手にとっては、今後の国際大会で不利に働く可能性もありそうだ。
また、WBCでは日本のボールに比べてひと回り大きく、表面が滑りやすいといわれるMLB公式球が使用され、戸惑う投手がいるのも毎回のこと。2023年の前回WBCでは、開幕前から松井裕樹投手(当時楽天、現パドレス)が対応に苦しみ、本番では1試合(1イニング)の登板にとどまった。
韓国戦に出場する選手の手元には既に、MLB使用球が配布されているという。井端監督は記者会見で、今季46セーブで最多セーブのタイトルを獲得した中日・松山晋也投手について聞かれた時にも「当然クローザー候補の1人だと思いますが、(韓国戦、WBCでの使用球が)日本のボールと違い、まだ投げていないので、そういうことも踏まえて見極めたい」と慎重だった。
ドジャース・大谷翔平投手、同・山本由伸投手ら普段MLBでプレーしている選手は、ぶっつけ本番でWBCに臨んだとしても心配はない。一方、日本のプロ野球では、日本独自の良さを追求するのか、それとも国際大会に勝つためにもMLBのルールに合わせるのか、遠からず決断を迫られることになりそうだ。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)