史上初の7者連続も…チームは延長15回で涙 タイガースエースの胸中「必ず戻ってくる」

スクーバルは6回1失点もチームは敗戦
【MLB】マリナーズ 3ー2 タイガース(日本時間11日・シアトル)
マリナーズ対タイガースのア・リーグ地区シリーズ第5戦が10日(日本時間11日)、シアトルのT-モバイル・パークで行われ、延長15回の激闘の末3-2でマリナーズが競り勝ち5戦3勝先取のシリーズを撃破。2001年以来24年ぶりとなるア・リーグ優勝決定シリーズ進出を決めた。一方のタイガースは、昨季サイ・ヤング賞を受賞した先発タリク・スクーバルがポストシーズン新記録の7者連続三振をマークしたが、第2戦同様に勝利を挙げることはできなかった。
延長15回裏、1死満塁からポランコが右前に弾き返すと、総立ちになった4万7000人を超える大観衆の歓声が地鳴りのように響きわたった。フィールドにできた歓喜の輪を剛腕スクーバルは三塁側ダグアウトからじっと見つめていた。
2回に犠飛で先制点を許しながらも2回2死からポストシーズン新記録の7者連続三振をマークした。勝てば次のシリーズ進出が決まる大一番での13奪三振もメジャーリーグ史上初となった。6回2安打1失点、13奪三振無四球の快投も報われなかった。
静まり返るビジターのクラブハウスで、スクーバルは気持ちの整理がつかないままだった。
「調子は良かったですよ。でも、それはどうでもいい。負けたんだから。正直に言うと、いまは自分のことについて話す気にはなれないかな……」
5日(同6日)の第2戦で先発したが、7回5安打2失点9奪三振の力投もチームは2-3で惜敗。要所でスライダー、カーブも織り交ぜながらの配球を再考。100マイル(約161キロ)を超える剛球とチェンジアップを軸にした本来の組み立てに戻し、スクーバルは気迫のこもる投球を続けた。6回、2死無走者で対峙した今季60本塁打のローリーを、この日最速の100.9マイル(約162.3キロ)の直球で空振り三振に仕留め仕事を終えた。
タイガースのAJ・ヒンチ監督から「球界で最高の投手にボールを渡す」と託された雌雄を決するマウンドで躍動したスクーバル。マリナーズとはレギュラーシーズで2度対戦し勝ち星はなく、同シリーズ2度の好投もチームの勝利には届かなかった。
球史に残る力投直後…語った自らの“原動力”
気持ちを落ち着かせた左腕は言った。
「僕らは本当にいい野球をしたよね。本当に強いチームだった。おそらく野球史でも最高の“勝つか負けるか”の試合を戦った。このチームには誇れることがたくさんある。目標だった優勝トロフィーは手に入れられなかったけど、誇りに思うべきこと、今後の糧となるものは多くあった」
そして言葉を足した。
「シーズンを敗戦で終えるのはつらい。でも、僕を駆り立てるのはワールドシリーズを勝ち取ること。10月の終わりまで戦い続けるチームの一員になること。それが僕の原動力だ。勝ちたいんだ、本当に。今年は届かなかったけど、必ず戻ってくる。もっといい自分になる。その自信があるんだ」
スクーバルはシアトル大出身。第2戦登板時には、かつて在籍した野球部の選手全員を球場に招待し「夢はいつか現実になる」のメッセージをマウンドの雄姿に映した。知り合いも後輩もたくさんいるこの街で勝利の美酒は味わえなかった。しかし、球史に残る力投は、多くの人の記憶に深く刻まれた。
昨季18勝4敗、防御率2.39でサイ・ヤング賞に輝き、今季も13勝6敗の成績でリーグトップの防御率2.21をマーク。スクーバルは2年連続の栄冠が期待されている。
(木崎英夫 / Hideo Kizaki)