オリ左腕、突然引退申し入れのワケ「悔いは全くない」 わずか2年、“野球卒業”の胸中

オリックス・大江海透【写真:小林靖】
オリックス・大江海透【写真:小林靖】

2軍では2年間で計40登板「完全燃焼しました」

 オリックスの育成左腕、大江海透投手が、2年の現役生活に自らの考えで終止符を打った。

 1軍がクライマックスシリーズ(CS)に向けた全体練習を、京セラドームで行っていた10月7日午後12時3分、球団からメディアに向けて1通のメールが発信された。

「オリックス・バファローズでは、大江海透投手より現役引退の申し入れがあり、これを受理いたしましたので、お知らせいたします」

 この一文に、支配下を目指して2年間、汗を流した大江のプロ野球人生が凝縮されていた。「この2年間にかけてやってきました。完全燃焼しました。やり尽くしたので悔いは全くありません」。引退が公表された翌日、スーツ姿で大阪の球団施設に姿を見せた大江の表情は、すがすがしかった。

 球団では10月2日に第1次の戦力外通告を5選手(支配下3、育成2)に行ったが、大江の名前はなかった。それだけに、2軍の選手の間に驚きの声が上がったが、大江の気持ちは早くから固まっており10月4日に球団に退団を申し入れたという。

 大江は佐賀県出身。神崎清明高、久留米工大、九州アジアリーグ・北九州下関フェニックスから2023年育成ドラフト2位でオリックスに入団。プロ1年目は2軍で19試合に登板し、2勝0敗、防御率6.10の成績で、支配下登録の夢はかなわなかった。それでも2年目を前にした台湾・ウインターリーグで防御率0.75をマークして一躍注目を集めた。今季は中継ぎ、抑えとして7月中旬まで防御率1点台をキープ。1軍に左腕が手薄というチーム事情もあり、支配下入りの可能性は大きかった。「去年より数字も良くなり、(プロで)通用するかな」と自信もあった。

 しかし、パワー投手が欲しいという1軍の要請もあり、支配下登録期限の7月末に朗報は届かなかった。「単純に実力不足です。1軍で使えないと判断されたから支配下になれなかったのですから」。支配下昇格を逃した数日後、大江は厳粛に結果を受け止める姿があった。それでも、「残り試合でレベルアップをしたい」とひたむきに腕を振った。

「指導者の方、平井(正史2軍投手コーチ)さんや、塁さん(牧野2軍投手コーチ)、小林(宏育成チーフコーチ)さんにつきっきりで指導してもらって感謝しています」。今後は野球には携わらず、地元に帰ってやりたい仕事を見つけるという。2年間の成績は40試合、3勝0敗、41回2/3、被安打53、35奪三振、与四死球19、自責点20、防御率4.32。第2の人生に幸あれ。

〇北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者一期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。

(北野正樹 / Masaki Kitano)

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