“朗希神話”が崩壊 薄氷勝利も…ド軍現場に流れた重苦しい空気「今日は取材なしだ」

佐々木は救援初失点、1点差逃げ切り勝ちにクラブハウスはシーンと静まり返った
【MLB】ドジャース 2ー1 ブルワーズ(日本時間14日・ミルウォーキー)
夢から覚めた後のような喪失感が漂った。報道陣に開放されたドジャースのクラブハウスは、シーンと静まり返っていた。いつもポストシーズンで1勝しようものならお祭り騒ぎなのに……。佐々木朗希は試合後の体のケアをしていたのだろうか。Tシャツ、ハーフパンツ姿だった。全く表情を変えることなく、足早に別室へ向かった。
ワールドシリーズ進出をかけた大事な初戦。左腕スネルが8回1安打無失点。ポストシーズン自己最多10三振を奪い、2点リードで9回の新守護神へつないだ。だが、この日はキレが今ひとつ。1死から四球、二塁打でピンチを招き、チュリオの中犠飛で1点差に。さらに四球を与えたところで、ロバーツ監督からタオルが投げられた。代名詞の剛速球も最速99.3マイル(約159.8キロ)と160キロ超の剛速球はゼロ。22球でストライク10球と制球も荒れた。
今季の救援防御率4.21はリーグ11位(メジャー21位)。世界一へは何よりの不安材料だったところで、ポストシーズン前に彗星の如く佐々木が現れた。100マイルを悠に超えるスピードボールに、揺れるように落ちるスプリット。「ロウキはクローザーだ」「ロウキが救世主だ」。誰もが魅了された。
9日(日本時間10日)のフィリーズとの地区シリーズ第4戦では3回無安打無失点。救援転向後はレギュラーシーズンから6試合連続無失点となり、地区シリーズ突破へ導くヒーローとなった。「今年残されたシーズンで自分のできることでチームに貢献したいと思っていた。今は少しですけど貢献出来て良かった」。中3日を空けての登板。日米通じて初のリリーバー生活を送る23歳に、救世主と期待するのは重かったということか。
報道陣にクラブハウスが開放されてから約30分後。まだ多くのメディアがいたが、球団広報は「ロウキを待っているのか? 今日は取材なしだ」と伝えて回った。佐々木朗希だって絶対的な存在ではない。悲願の世界一連覇まで、あと7勝。朗希神話を失った現実と向き合って戦っていくしかない。
(小谷真弥 / Masaya Kotani)