巨人に眠る逸材…2軍で打率3割超 覚醒呼んだコーチの“一声”「まだまだ伸びる」

巨人・山瀬慎之助【写真:加治屋友輝】
巨人・山瀬慎之助【写真:加治屋友輝】

6年目・山瀬の打撃改造、矢野2軍打撃チーフコーチが説明

「打てる捕手」として覚醒気配が漂ってきた。巨人・山瀬慎之助捕手は6年目の今季、2軍で自身初の打率3割をマーク。2年ぶりにイースタン・リーグ優勝を果たした2軍の正捕手として攻守に貢献した。1軍出場こそ1試合に終わったものの、本格化をうかがわせる充実ぶり。付きっきりで指導してきた矢野謙次2軍打撃チーフコーチが、打撃開眼までの経緯と1軍定着への課題を説明した。

 巨人2軍は今季、80勝44敗2分けで2年ぶりにイースタンを制した。チーム打率.264、542打点、576得点はリーグ1位を記録するなど多くの若手選手が躍動した。中でも山瀬は自己最多となる100試合に出場。昨年は96試合で打率.219だったが、今年は同.302と8分以上も数字を伸ばした。

 春季キャンプは1軍スタートも開幕は2軍。春先までの山瀬はアッパースイングで飛距離を出そうとしていたという。ただ、矢野コーチ発案の練習で壁にぶつかることになった。ネットに30センチ四方ほどの小さな的を作り、少し離れた位置からそこを狙って打つティー打撃。「山ちゃんはバットが下から出ているから、うまく枠の中に入れられなかったんです。あっちこっちに飛んでいっちゃっていました」と振り返る。

「ライナーでいくのか、ワンバウンドでいくのか、山なりでいくのか。自分たちでコントロールして打つ練習です。その練習をやっているうちに、上から球を叩かないと打球をコントロールできないんだと気づいたんでしょうね。そこからスイングが今までと真逆に、上から叩くスイングになりました。遊び感覚の練習から本人が気づいて、効果が出てきました」

 打撃内容が良くなり「反対方向にも徹底して打つことができるようになってきた」と評価する。「良くなっている選手に共通するのは、中堅から逆方向に強い打球を打てることです」。9月28日には今季1軍初昇格を果たすと10月1日の中日戦(東京ドーム)で2点適時打を放ってプロ初打点をマークした。

捕手ゆえの課題「配球を考えすぎちゃうところがある」

 次なるステップは1軍定着。球界屈指の強肩は折り紙付きで、やはり課題は打撃となる。「弱点はキャッチャーゆえに打席で配球を考え過ぎちゃうところがある点。そうすると結構ドツボにはまる時があるんです」。自分がリードする感覚で打席に入り、配球を読み過ぎるケースがあるというのだ。

 基本は直球への対応。「真っすぐのタイミングで打ちにいって、浮いた変化球を拾っていく。阿部(慎之助)監督も言っているように、それが一番簡単でやりやすい」と力を込める。素直に直球を狙っていってほしいと感じるそうだ。

 1軍打撃コーチだった昨年の交流戦で、ソフトバンクの柳田悠岐外野手、近藤健介外野手、山川穂高内野手にも話を聞いたと回顧する。「スーパー打者の3人が『真っすぐですよ。真っすぐを打ち返せなかったら何も打ち返せないです。真っすぐを打ちにいって浮いた変化球を拾う』と言っていました。配球に偏りがある投手の場合は変化球を狙っていくときはありますけど、基本は真っすぐ狙いです」。

 星稜高では奥川恭伸投手(ヤクルト)とバッテリーを組み、2019年ドラフト5位で巨人に入団。1年目から2軍で実戦経験を積み重ね、3年目からは1軍出場も続けている。「打てる捕手」としてさらなる飛躍の鍵は考えすぎないことで、矢野コーチも「それが徹底できたら、まだまだ伸びていく」と力を込める。シンプルに、力強く。一皮むけた24歳の未来は明るい。

(尾辻剛 / Go Otsuji)

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