台湾球界で35歳の日本人が「影のMVP」 人気拡大…観客動員数は初の300万人突破

7月に行われたオールスターゲームは、2日間で史上最多となる8万人のファンが来場【写真提供:CPBL】
7月に行われたオールスターゲームは、2日間で史上最多となる8万人のファンが来場【写真提供:CPBL】

総観客動員数は史上最多の300万人突破……CPBL人気の高まり

 今季、空前の盛り上がりを見せている台湾プロ野球(CPBL)は、前期シーズン、後期シーズンのいずれも終盤まで熾烈な戦いが続いた。(情報は9月24日時点)

 観客動員の絶好調は終盤に差しかかっても勢いに陰りはない。むしろ、後期シーズンに入って観客は増加。総観客動員数は8月29日、史上最多だった昨季(276万6,386人)を上回ると、9月6日には300万人を突破、350万人到達も視野に入った。

 7月19日、20日の両日、台北ドームで行われたオールスターゲームは2試合連続で満員(4万人)となり新記録を樹立。さらに、9月5日から7日にかけて開催されたレジェンド、味全ドラゴンズ・林智勝の引退試合3連戦は、計10万6316人のファンを集めた。不祥事や国際大会の不振などにより人気が低迷し、1試合平均2000人を下回っていた時期もあったと考えると、まさに「隔世の感」だ。

 台湾初の室内球場・台北ドームの運用開始、そして昨秋のWBSCプレミア12の優勝は、台湾における野球の地位を高め、CPBLを新たなステージへと引き上げた。そして、CPBL自体のブランド力、可視性が向上したことで、さまざまな相乗効果が生まれている。日本でもすっかりおなじみとなったチアリーダーは、現在の応援スタイルの「本場」といえる韓国からも人気メンバーが続々と加入し、観客動員を支える大きな要素に。

 また、イベントデーでは、さまざまなジャンルとのコラボが実現し、新たなファン層を開拓。日本関連のイベントも多く、この約1カ月間だけでも、往年のNPBのレジェンド選手を迎えての「日本デー」や、漫画『ハイキュー!!』、VTuber「hololive(ホロライブ)」とのコラボ、「ケンティー」こと中島健人さんのミニコンサートなどが実施された。

前期は最終戦で統一が優勝、日本人右腕が胴上げ投手に

 前期シーズンは最終戦で優勝チームが決定する大混戦となった。統一ライオンズは、6月21日にはマジックを「4」まで減らしたが、そこから3連敗しマジックは消滅。2位につけていた昨年の台湾王者、平野恵一監督率いる中信兄弟が連勝し、ついに6月26日、両チームはゲーム差なしで並んだ。

 6月28日、統一は富邦ガーディアンズ相手に、昨季までNPBで7シーズンプレーしたC.C.メルセデスが先発。来台以来最長となる8回を投げ1失点(自責点0)と好投すると、9回は日本人右腕・高塩将樹が危なげなく3人で締め、3-1で逃げ切った。一方、中信兄弟は、ここまで3勝7敗と相性の悪い、一軍参入2年目の台鋼に4-8で敗れ、統一に優勝マジック「1」が再点灯した。

 そして迎えた6月29日の最終戦、引き分け以上で前期王者が決まる統一は、楽天モンキーズの本拠地、北部・桃園市の楽天桃園球場へ乗り込み、雨のため中断となった4月20日の「継続試合」として、1対0でリードする4回表1死3塁、フルカウントの場面から試合を行った。

 統一は試合再開後すぐに1点追加すると、4月20日も先発した21歳の左腕、林詔恩が「続投」、7回途中まで1失点と試合をつくった。2-1で迎えた8回に登板した高塩は、内野安打1本のみで危なげなく切り抜けた。9回、ベンチが試合の最後を任せたのは、調子を落としている守護神の陳韻文ではなく高塩だった。簡単に2アウトをとると、最後の打者、陳佳楽を落ちる球で三振に切って取り、この瞬間、統一は2025年の前期シーズンを制覇、18度目の半期優勝を決めた。

統一「優勝の立役者」は日本・独立リーグ出身の高塩将樹

 統一は、元NPBのメルセデス、メンデスら4人の外国人投手が60試合中46試合で先発し、36勝中22勝を挙げるなどフル回転。打線も、プレミア12代表の林安可がわずか31試合出場でリーグ4位の11本塁打を放つなど、チームでリーグトップとなる計45本塁打を記録。三塁打22本、長打率.403も1位、255打点はリーグ2位と強打を発揮した。かつては課題だった守備も、エラー数、守備率共に、中信兄弟に次ぐ2位と安定し混戦を制した。

 こうしたなか、「影のMVP」と賞賛されたのが高塩だった。日本の独立リーグを経て、2017年から台湾の社会人野球でプレーしてきた高塩は、2021年12月、台湾プロ野球が外国人留学生及び社会人でプレーする外国人選手のドラフト参加条件を緩和したなか、2022年からドラフトに参加。35歳、3度目のドラフト挑戦となった昨年、統一から6位指名を受けたオールドルーキーだ。

 前期はチーム最多の25試合、救援陣最多の37回2/3を投げ、2勝1敗8ホールド6セーブ、防御率1.91、WHIPは0.74という大車輪の活躍を見せ、層の薄いブルペン陣を支えた。林岳平監督やプレミア12のMVPでキャプテンの陳傑憲、元メジャーリーガーの胡金龍も「優勝の立役者」と口を揃えた。

後期はV2目指す「平野」中信が首位、「古久保」楽天が猛追

 7月4日に開幕した後期シーズンは、9月24日現在、各チーム残すところ約10試合となったが、前期同様、最後の最後までもつれそうな様相だ。

 後期の首位を走っているのが、29勝21敗、前期は2ゲーム差で優勝を逃した平野恵一監督率いる中信兄弟だ。7月末の時点では、首位の中信兄弟から最下位の統一まで全6チームが1ゲーム内にひしめく団子状態だったが、中信は8月に16勝7敗と大きく星を伸ばした。

 しかし、9月に入り調子が今ひとつの中信兄弟を猛追しているのが、古久保健二監督率いる楽天モンキーズだ。投手陣が9月防御率1点台と絶好調、野手陣もベテランがムードを盛り上げ、勝負強い打撃で14試合のうち10勝と、白星を重ねている。9月12日、中信との首位攻防3連戦の初戦に敗れ、一度は中信に後期優勝マジック「13」点灯を許したが、そこから連勝しマジックを消滅させると、ついに0.5ゲーム差まで迫った。

 これに続くのは3.5ゲーム差、前期を制した統一だ。4位は4ゲーム差の台鋼が粘り強く戦っている。2023年の王者、味全ドラゴンズは5.5ゲーム差の5位、残り8試合での逆転優勝は厳しそうだ。また、6位の富邦は首位からは10.5ゲーム差、前期に続いての最下位が濃厚だ。

 なお、中信兄弟は年間勝率でもトップに立っているが、こちらも同2位の統一との差は1.5ゲーム差。後期の優勝争いとともに、年間勝率1位争い、そして、プレーオフ進出争いと熱戦の連続だ。

(「パ・リーグ インサイト」駒田英)

(記事提供:パ・リーグ インサイト

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