日本で活躍した32歳が台湾で首位打者争い 吉田一将や櫻井周斗が「助っ人」に

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  • 2025.10.16
  • 2025.10.17
台鋼・呉念庭【写真提供:CPBL】
台鋼・呉念庭【写真提供:CPBL】

個人タイトル上位には日本のファンおなじみの顔が

 9月19日に首位打者に躍り出た呉念庭(台鋼)。通算100安打を放った8月12日には父親となり、公私ともに充実のシーズンを送っている。(情報は9月24日時点)

 呉念庭は今季、開幕直後は打率が2割を切るなど低迷し、さらに肉離れで休養を余儀なくされるという波乱のスタートとなったが、5月末に一軍に復帰。6月は月間打率.463と打ちまくり、以降は3割台をキープ、得点圏打率は.402と、文字通り「得点圏の鬼」の活躍を見せた。今季話題のトルピード(魚雷)バットを手にしてからのヒット量産となったが、本人曰く、ファームで打撃のメカニズムを見直したことが、真の好調の理由だという。

 24本塁打で本塁打トップ、打率も.314で2位につけているのが、日本のファンにもおなじみのスティーブン・モヤ(台鋼)だ。オールスターゲーム観戦のため、子どもたちと共に台湾へ向かっていた夫人が機内で体調を崩し、着陸後、救急搬送されるも他界するという悲劇に見舞われたモヤ。球団は休養、さらには退団もやむなしと考えていたが、本人は「チームに迷惑をかけたくない、グラウンド内に集中することで、悲しみから少しでも意識をそらしたい」とプレー続行を希望。7月22日、最初の打席で犠牲フライを放ち勝利に貢献。お立ち台で「皆さん、家族とのかけがえのない時間を大切にしてください」とファンによびかけ、涙を誘った。

 8月は打率.387、4本塁打、12打点で、今季2度目の月間MVPに輝いた。その後、腹筋を痛めて半月ほど欠場したが、9月20日、一軍公式戦に復帰。リーグ唯一OPS1.000超えの打棒を見せた。

 そのほか、打点は吉力吉撈・鞏冠(味全)が79打点でトップに。安打数(125本)、盗塁(26個)は李凱威(味全)とプレミア12の優勝メンバーがリードする。同じくプレミア12代表で、日本球界も長打力を評価し熱視線を送っていると伝えられる林安可(統一)は22本塁打、71打点といずれも2位につけている。

 投手陣は、規定投球回数到達13人のうち12人が外国人投手となっている。13勝で並んでいるトップタイの3人のうちの1人が、CPBL5シーズン目、かつて広島でプレーしたブレイディン・ヘーゲンズ(台鋼)だ。

 このオフの海外移籍が噂される徐若熙(味全)は、計108イニングで規定投球回数に達しておらず、4勝7敗と勝ち星も伸びていない。だが、防御率は2.17。WHIP0.82、被打率.193はいずれもリーグトップクラスだ。

 ホールドは、前期の優勝に貢献し、後期も統一のブルペンを支えている高塩将樹(統一)が23個でトップ。CPBL5シーズン目となった陳冠宇(楽天)が21個で続いている。セーブは台鋼の2年目、林詩翔が27セーブでトップ。プロ入りまで幾度も挫折を味わった苦労人が、クローザーを任され開花した。

日本人「助っ人」は吉田一将、櫻井周斗、鈴木駿輔が登板

 今季CPBLでは、台鋼と富邦で複数の日本人選手がプレーしたが、外国人登録枠入りし、一軍公式戦登板を果たしたのは、かつてNPBでプレーした台鋼の吉田一将、櫻井周斗、そして富邦の鈴木駿輔の3人にとどまった。

 開幕段階で支配下登録された日本人選手は、昨季から抑えとして活躍し「台鋼のダルビッシュ」と呼ばれた吉田一将のみだった。チーム事情により今季先発に転向した吉田は、腰を痛めた影響もあり初登板は4月末となったが、2試合目の5月3日には6回途中無失点で「お立ち台」に選ばれる上々のスタート。しかし、打線の援護に恵まれない不運もあり、勝ち星は伸びなかった。

 吉田は登録最終期限前に登録抹消。13試合登板、3勝6敗、防御率5.10の成績で終えた。それでも球団は、吉田の技術と経験を若い選手に伝えてほしいと残留を要望。その後も2軍でプレーを続けた。

 8月に支配下登録されたのが櫻井周斗だ。春季キャンプのテストで合格し、8月16日に初の1軍昇格。翌17日、本拠地、南部・高雄市の澄清湖球場で行われた統一戦で初登板・初先発。制球に苦しんだものの、5回無失点でうれしい初勝利を挙げた。8月23日の中信戦も6回2失点と試合をつくったが、翌日2軍に降格した。

 また、櫻井との支配下登録争いで敗れる形となったのが、元BCリーグ武蔵の小野寺賢人だ。昨季はケガで途中離脱するまで、制球力と緩急で安定感抜群の投球を披露。今季、リハビリを経て2軍戦に復帰し、次第に調子を上げアピールしたが、支配下登録はならず退団となった。

 一方、富邦は3月下旬、「育成外国人」という形で元茨城アストロプラネッツの根岸涼、元くふうハヤテの二宮衣沙貴の両右腕と契約した。二宮は主に先発として6月中旬まで2軍で9試合に登板。根岸も中継ぎとして7月初旬まで2軍で21試合に登板したが、いずれも支配下登録とはならなかった。

 5月に富邦に途中加入したのが鈴木駿輔だ。BCリーグを代表する右腕として楽天モンキーズに入団した昨季は、初登板・初先発で勝ち投手となるなど3勝(4敗)を挙げたものの防御率は5.55。8月31日の登録期限で抹消され、無念の退団となった。

 鈴木はその後も台湾に残り、社会人の全越運動でプレー。アマの春季リーグでの活躍を受け、5月、外国人投手が負傷した富邦が獲得した。8月25日に支配下登録の機会をつかんだ。

 体重を約4キロ落として臨んだという今季は、課題だった制球が大幅に改善。決め球のフォークもスピードアップし、ここまで4試合、2勝1敗、防御率1.90と、段違いの安定感を見せている。

レジェンド選手の引退相次ぐ、WBCに向けた動きも

 今年のドラフト会議は6月30日に開催された。ナショナルチームクラスの大物はいなかったが、全体1位指名権を持つ台鋼が指名したのは、19歳の社会人MAX152キロ右腕、韋宏亮(新北凱撒)。ケガの影響で高校卒業時はドラフト参加を見送ったが、たくましさを増してプロ入りを果たした。9月6日に1軍初登板を果たすと、5試合連続ホールドをマークするなど、すでに1軍に定着した。

 今季は、国際大会を含め長年台湾球界をけん引してきた超大物の引退も相次いだ。CPBLの通算ホームラン記録を持つ43歳の林智勝(味全)は9月7日、台北ドームで行われた引退試合3連戦の最終戦、6回裏、21年間に及ぶ現役生活の最終打席で、自身のリーグ本塁打記録を更新する通算305号をレフトスタンドにたたき込み、有終の美を飾った。

 9月20日には41歳の胡金龍(統一)、翌21日には37歳の林ジェシュエン(富邦)の引退試合が行われた。共に元メジャーリーガーである二人。今季も指名打者兼代打の切り札として高打率を残した胡の打撃技術、林の外野守備は、CPBLのファンに鮮烈な印象を与えた。

 WBCに向けた準備も始まっている。8月25日に80人のラージリストが確定。オールプロでCPBLのほか、アメリカや日本でプレーする選手も含まれていることがわかった。7月、アメリカを訪問したCPBLの蔡其昌コミッショナーは、外野手のスチュアート・フェアチャイルド(レイズ)及び今季、カブス傘下3Aで20本塁打を記録した内野手のジョナソン・ロングの2人が、台湾代表入りに強い意欲を見せていることを明らかにした。

 蔡コミッショナーは9月初旬、日本ハム、楽天、ソフトバンクの3球団を訪問し、所属台湾選手の出場意向やコンディションを確認。12月中にもメンバーが絞り込まれ、来年1月中旬からは代表キャンプが行われる模様だ。

(「パ・リーグ インサイト」駒田英)

(記事提供:パ・リーグ インサイト

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