台湾で高まるパ・リーグ熱 首位打者が見たハムの躍進…明かした「日本のエース」との思い出

台湾でパ・リーグCSのライブビューイングイベントを開催された
パシフィックリーグマーケティング(以下、PLM)は12日、台湾北部、台北市内の商業施設で「2025 パーソル クライマックスシリーズ パ」ファーストステージ・日本ハム-オリックスの第2戦のライブビューイングイベントを開催した。
かつて西武で8年間プレーし、現在は台湾プロ野球の台鋼ホークスに所属。今季は首位打者に輝くなど大活躍をみせた呉念庭(ウー・ネンティン)内野手が解説を務めるとあり、西武時代のユニホームを身にまとったファンも多数駆けつけた。
台湾でパ・リーグ6球団の主催試合を連日放送・配信しているDAZN台湾の石屹軒アナが進行役をつとめ、5回終了まで約2時間半に渡って行われたイベントでは、現役選手ならではの目線、多くの出場選手と同じグラウンドに立ったことがある呉ならではの解説が飛び出し盛り上がりをみせた。
クライマックスシリーズ(CS)の印象を問われた呉は、自身が出場した2022年、ソフトバンクとのファーストステージの経験をもとに「投手が7割を占める。1点を取るのが大変。球場がホークスファンで埋まり、ライオンズファンはレフトに少ししかおらずプレッシャーが大きかった。レギュラーシーズンとは違う緊張感があった」と振り返った。
現在もDAZN台湾を通じ、日本プロ野球をチェックしているという呉。日本ハムについては「自分が対戦していた頃は、新庄剛志監督の就任直後で再建の時期だったが、年々若い選手が増え、成長し、どんどんいいチームになっている」と分析。なかでも万波中正外野手は、新庄監督就任以降、成長幅が最も大きい選手だと思うと語った。
一方、オリックスについては、「ライオンズ在籍当時は、とにかく投手力が安定していた。野手陣も、各自が攻撃スタイルを確立して3連覇を果たした。山本由伸投手と宮城大弥投手が先発すれば2勝を計算できる感じで、こっちは3タテされないよう、毎回3試合目が必死だった」と振り返った。
また、開催球場の「エスコンフィールドHOKKAIDO」については、「メジャーリーグの球場には行ったことはないですが、エスコンフィールドはまさにメジャーの球場って感じです。ロッカールームが大きくて、一人ひとりにゲーミングチェアがあるんです」と絶賛。「実はケータリングも最高。メインのお肉は日替わりで、うどんやそば、サラダもついていて、先発じゃない日は多めに食べちゃったり」と告白し笑わせた。

日本ハムの伊藤は「日本野球のエースらしい投手」
日本ハムの伊藤大海投手に話が及ぶと、「僕の初ホームランは彼からなんです」と明かし歓声を浴びた。「彼が新人の2021年、プロ初登板でライオンズ相手に先発してきたんですが、自分も絶好調で2軍から上がってきたんで、これはいけるぞと。フェンスの高い札幌ドームでしたし嬉しかったです」と笑顔をみせた。その後は、解説者の顔になり「一球一球、魂が入っており、相手を気迫でねじ伏せる素晴らしい投手。ダルビッシュ有さんにイメージが近い、いかにも日本野球のエースらしい投手」と称賛した。
また、第2戦の両先発、日本ハムの北山亘基投手、オリックスの宮城大弥投手と過去に対戦した際の印象を問われると、「どちらかというと北山投手が苦手だった」と告白。北山との初対戦の際には、「まるで山本由伸投手のようなフォーム」と驚いたと話し、150キロ台半ばの速球は球威があり、制球も良く、フォークも切れていたと振り返った。
一方、宮城については「実は結構、宮城くんは好きなタイプで、対戦成績はまずまずだと思います。」とニンマリ。2021年、満塁の場面でレフト線への当たりをファウルとジャッジされた事は鮮明に記憶しているようで、「その後、三振でした」と苦笑いした。
レイエスの「トルピードバット」の使い分けに注目
今季、台湾プロ野球で首位打者を獲得した呉の活躍を支えたギアが「トルピード(魚雷)バット」だ。今季は開幕から不振に苦しんだが、怪我によりファームに降格したタイミングで、バッティングのメカニズムを見直すと共に、「重心が手前にあるので、スイングの時に普通のバットよりも軽く感じて、スムーズに出てくる」というトルピードバットを手にすると復調。6月は月間打率.463と安打を量産すると、その後も高打率をキープし自身初のタイトルを獲得した。
呉は、トルピードバットを手にして打席に入った日本ハムのフランミル・レイエス外野手について、「バファローズが九里亜蓮投手にスイッチした後バットを変えたのは、九里投手が変化球の多い技巧派で、より長くボールを見ることができるからかもしれません」と指摘した。レイエスが殊勲の逆転タイムリーを放ったのはイベント終了後のことではあったが、会場のファンは、野球の奥深さを感じた事だろう。
両チームの選手の中で特に親しい選手を問われると、まず名前にあげたのは日本ハムの松本剛外野手。「同学年という事に加えて、オフにトレーニングを行う施設も一緒なんです。ファームにいたころ、よく声をかけあっていたので、1軍で再会した時は気持ちが高まりましたね」と振り返った。
オリックスで親しいのは、元西武の森友哉捕手や杉本裕太郎外野手だといい、特に杉本は、お互いファームにいた期間が長かったことから、2021年のオールスターゲームで共に初出場を果たした際は感慨深かったと明かした。2回、杉本が先制ソロを放つと、「この後、ベンチの前で『昇天ポーズ』やりますよ、注目して」と呼びかけ、台湾のファンに、愛称の「ラオウ」についての説明を行った。
慣れ親しんだ西武時代の背番号で人生初のタイトル獲得
イベント終了後、呉選手は解説初体験を振り返り、「選手目線からいろんな情報を伝えられたり、ファンに向けて解説することができて楽しかったです。『なるほど、中継で見ているより、実際プレーするのは大変なんだ』と思ってくれたら嬉しいです。状況にあわせてバットを変える話などは、気がついているファンもいると思いますが、そこも野球観戦の醍醐味の一つ。楽しみ方を伝えられたかな」と振り返った。
背番号、そして応援歌を、慣れ親しんだ西武時代のものに変えて臨んだ今季の活躍については、「納得できたシーズンでした。西武を退団して、活躍できる状態で台湾に戻ってきたという思いがあるので、人生初めてのタイトルは自信になりました。」と笑顔。そして「日本のファンの皆さんにも台湾で頑張っていることが伝わっていると思うので、台北ドームや、台鋼の本拠地、高雄に、観光を兼ねてぜひ応援にきてください」と呼びかけた。
(「パ・リーグ インサイト」駒田英)
(記事提供:パ・リーグ インサイト)