オリの若手が続々“開眼” 福川コーチの大胆堤案で活路…フェニックスLで課す「特別な打席」

フェニックスLで若手らが鍛錬中
オリックスの福川将和・2軍打撃コーチが、宮崎県内で行われている「みやざきフェニックス・リーグ」で、各打者に新たな挑戦を指導している。
「2ストライクまで見送ったり、わざと空振りをしたり、シーズン中にはできないことをやってみる『特殊な打席を作りなさい』と言っています」。夏に逆戻りしたような強い南国の日差しを浴びながら、福川コーチが取り組みの一端を明かしてくれた。
12球団のほか四国ILプラス選抜や独立リーグ選抜などが参加し、10月6日から始まったフェニックス・リーグ。勝敗や個人成績とは関係のない教育的な意味合いの強い試合だからこそ、各チームはスタンドの観客には見えない部分で様々なテーマに取り組んでいる。
オリックスの打撃面では「特殊な打席」だ。1試合のうち、1打席は必ずテーマを持って打席に入る。足の速い打者なら全球、ファウルになってもセーフティバントを試みてもいいし、2ストライクに追い込まれるまで見逃しても構わない。
「2ストライクまで待つと、打ちに行く気持ちがないからめちゃくちゃボールが見えるんです。その打席でのボールの見え方が、一流バッターの見え方なんです。『それを体験してこい』と言っています。わざと空振りをしたっていいんです。その方が次のボールに合わせやすいんです」
福川コーチは大体大浪商高、東農大、三菱自工岡崎から、2001年ドラフト5位で捕手としてヤクルトに入団。現役引退後はヤクルトで2軍バッテリーコーチや1軍打撃コーチを務め、2025年からオリックスの2軍打撃コーチに就任した。一流打者のボールの見え方は、キャッチャー目線からの指摘でもあるのだろう。
成果も現れている。10月17日の独立リーグ選抜戦(SOKKEN)で、初球のカーブを右翼へ先制2ランを放った来田涼斗外野手。「ストレートを(頭の中から)消して、変化球だけを打つつもりでした。変化球を狙っての本塁打。これからも一発で仕留めることを意識していきたい」と笑顔を見せた。将来の大砲候補、内藤鵬内野手も変化球を待った一人。10月18日のヤクルト戦(西都)の2打席目に初球の変化球を捉え、左越え二塁打に。「『初球の変化球に飛びついてでも打て』と言われていたのですが、初めて初球の変化球を長打にすることができました」と声を弾ませた。「どんどん振っていけ」という福川コーチのアドバイスで積極性も生まれ、この日は4打数3安打の固め打ち。
ドラフト1位の新人、麦谷祐介外野手は「2ストライクまで見送ってからも、ヒットが打てました。シーズン中にはできないことを、今後に生かしたい」という。同4位の山中稜真選手も「2ストライク後の空振りが多いので、意図的に追い込まれるまで待つ打席もあります。そこから四球を取りにいくこともあり、結果にとらわれずチャレンジしています」と話す。
福川コーチは「何をするかは打者に任せています。僕に(何をするか)言わないでやってもいいんですが、言うことによって意識が高くなります」。トライ・アンド・エラーで、若い打者のレベルアップを図る。
〇北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者一期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。
(北野正樹 / Masaki Kitano)