入学時は投手→両打スラッガーに成長「これは化ける」 コーチを唸らせたドラ1の“才能”

広島が仙台大・平川蓮を1位指名
「プロ野球ドラフト会議 supported by リポビタンD」が23日、都内で開催され、仙台大の平川蓮外野手が広島から1位指名を受けた。平川は身長187センチ、体重93キロの恵まれた体格と高い身体能力を誇るスイッチヒッター。大学では入部約3か月で投手から野手に転向し、2年秋からは両打ちに挑戦した。仙台大の野手がドラフトで1位指名を受けるのは史上初の快挙だ。
広島と日本ハムが外れ1位で指名した直後、記者会見場に姿を現した平川。広島が交渉権を獲得したのを確認すると、安堵の表情を浮かべた。「まさかこの順位で呼ばれるとは思っていなかった。今日は喜んで明日からはまた練習して、トリプルスリーを目標に頑張りたい」。喜びも束の間、すぐにプロでの活躍を見据えた。
球団の本拠地である広島県は訪れたことがなく、「印象は特にない」というが、「どこであろうと自分らしさを出すだけ」と頼もしい。「新井貴浩監督には右打ちについて、同じポジションの秋山翔吾外野手には守備について聞きたい」と声を弾ませた。
平川は札幌市出身。父・敦さんは北海高の硬式野球部監督で、2016年夏の甲子園で準優勝した経験を持つ。高校進学の際は北海高も受験し合格したが、「父親のもとで野球をすると家で気まずい。それなら父親を倒そう」と公立の札幌国際情報高へ。高校時代は最速140キロ右腕として活躍し、3年夏は「4番でエース」を務めた。
仙台大にも投手として進学し、1年春の新人戦で公式戦デビューを飾ったが、その後、小野寺和也コーチの提案で野手に転向。3年春にレギュラーを獲得すると、4年時は大学日本代表で4番に座るまでに成長を遂げた。4年秋は打率.378、4本塁打、22打点(連盟新記録)、13盗塁とキャリアハイの成績を残し、最後までアピールを続けた。
成長後押しした監督、コーチも今後に期待
仙台大の指導者も指名を喜ぶ。飛躍のきっかけを与えた小野寺コーチは、「もともと体が大きく、アップでダッシュをしている姿を見て身体能力の高さも感じていた。打撃が良いとも聞いていたので、野手転向を提案しました」と明かす。
実際に打撃を見ると、「スイングの軌道が綺麗でぎこちなさや癖がない。これは化ける可能性がある」と直感。それからは細かい部分の微修正こそ行ったものの、小野寺コーチが「とにかくトレーニングを一生懸命やるし、野球が大好きで向上心がある」と評するように、本人のたゆまぬ努力により成長を続けたという。体を大きくして長打力を伸ばしつつ、持ち前の走力も維持してスケールの大きい選手へと変貌した。
両打ちを勧めた森本吉謙監督も「簡単なことではなかったと思うが、コーチと二人三脚で、人の倍、努力することで今のかたちができあがった」と目を細める。日頃からの努力を見てきた指揮官にとって、1位指名は大きな驚きではなかった。
「(ここまでの成長を)予想していました。まだまだ良くなると思う。どこまで伸びるか分からないので、枠に収まらない選手になってほしいです」とは小野寺コーチ。現役時代に慶大で2度、首位打者に輝いた敏腕コーチの目に狂いはなかった。天井の見えない強打者のプロ野球人生が、今から楽しみだ。
(川浪康太郎 / Kotaro Kawanami)