“主砲流出”もこだわった投手 立て続けに3人…専門家がみた巨人の戦略「満足でしょう」

球団ごとに見えた指名の狙い、野口寿浩氏が解説
各球団の狙いが明確に表れていた。「2025年プロ野球ドラフト会議supported by リポビタンD」が23日に都内で行われ、116人(支配下73人、育成43人)が指名を受けた。現役時代にヤクルト、日本ハムなど4球団で21年間捕手として活躍した野球評論家・野口寿浩氏は「今年はどの球団も狙い通りの指名ができたと感じます」と評価。各球団の指名の意図と背景を解説した。
今回、最多となる3球団が1位競合となった創価大・立石正広内野手は、セ・リーグのペナントレースを制した阪神が交渉権を獲得。その阪神は2位で日大・谷端将伍内野手、3位で筑波大・岡城快生外野手と上位指名3人が野手となった。「大学生の野手に逸材が多い年なので、それで良かったと思います」。
投手陣は村上頌樹と才木浩人のダブルエースが20代で全体的に若い。「これから脂がのってくる投手が多く、21歳の門別(啓人)や19歳の今朝丸(裕喜)も出てくるし充実している。凄くいい指名だったし100点のドラフトじゃないでしょうか」とチーム状況を踏まえた動きを支持した。
また、固定されている野手のレギュラー陣も近本光司外野手や大山悠輔内野手が30歳を超え、佐藤輝明内野手はメジャー志向が強い。数年後の世代交代を見据える必要もあり「立石は即戦力で使えますけど、次の時代を森下(翔太外野手)を含めて、この3人で作っていくというのが狙いでしょう」と分析。次世代のスター候補になると期待を寄せた。
村上宗隆内野手が今オフのメジャー挑戦を表明しているヤクルトも同様に上位は野手。1位で法大・松下歩叶内野手を一本釣り、2位で城西大・松川玲央内野手を指名した。「完全に村上の後釜ですよね。松下はやってくれると思います。ただ、村上の穴は1人では絶対に埋まりません。指名された2人を含め、みんなでカバーすることになるでしょう」と説明した。
オリックスは高校生中心「そういうコンセプト」
一方、リーグ連覇を逃した巨人は公言通りに1位は鷺宮製作所・竹丸和幸投手。2位が早大・田和廉投手、3位は亜大・山城京平投手と即戦力投手を上位で3人続けて指名した。菅野智之投手(オリオールズ)がメジャー移籍した今季は先発投手陣が不安定でV逸。「今年一番苦しんだのは先発投手ですから、そこを何とかしたいという思いが見えます」と解説した。
主砲の岡本和真内野手がメジャー挑戦するが「岡本の穴も大きいですが、野手と投手を天秤にかけて、投手の方がどうにも回らないと判断したのでしょう」と推測。「指名した投手3人とも開幕1軍に入る可能性がある。球団としては満足できるドラフトでしょう」と及第点を与えた。
他チームと比べると異色に見えたのはオリックス。1位競合した健大高崎高・石垣元気投手を抽選で外すと、外れ1位で延岡学園高・藤川敦也投手を指名するなど4位までが高校生投手だった。7位も高校生で明秀日立高・野上士耀捕手。「高校生が多いですけど、そういうコンセプトなのでしょう。先を見据えたドラフトに振り切っていた」と説明した。
今年のドラフトは支配下73人中、40人が大学生。また社会人は巨人1位・竹丸以外の11選手は4位以下での指名となった。
昨年のドラフト1位で5球団競合となった楽天・宗山塁内野手は122試合に出場。ロッテ1位の西川史礁外野手はリーグ6位の打率.281を記録した。「今年のルーキーは非常にいいものを見せてくれた」と野口氏も評価する。今ドラフトで指名された選手も負けてはいない。来年の活躍が、今から楽しみである。
(尾辻剛 / Go Otsuji)