鷹・山川穂高の胸中 2軍落ち&不振で「個人的な悔しさ」も…揺るぎない“優先事項”

勝ち越し2点打に3ラン…10得点で阪神を圧倒
■ソフトバンク 10ー1 阪神(26日・みずほPayPayドーム)
1試合5打点の大暴れにも主砲に笑顔はなかった。26日に行われたSMBC日本シリーズ2025の第2戦(みずほPayPayドーム)。10-1で快勝したソフトバンクに勢いをもたらし、レフトスタンドの阪神ファンにため息をつかせたのは山川穂高内野手のバットだった。
初回に1点を先制されたソフトバンクがすぐさま反撃に転じた。栗原陵矢内野手の適時打で追いつき、なお2死一、二塁の好機で打席には山川。阪神先発の先発のジョン・デュプランティエ投手が投じた真っすぐを捉えた打球は、右中間フェンスを直撃。2点適時打で勝ち越しに成功した。勢いは止まらず、2回2死一、三塁では左中間に3ランを叩き込み、一気にリードを8点差に広げた。
「完璧ですね。もう今年一番くらいのいい打席になったと思うので。良かったと思います」。その言葉とは裏腹に、表情を崩すことなくダイヤモンドを1周すると、恒例のどすこいパフォーマンスでも笑みはなし。今シリーズを1勝1敗のタイに戻した立役者の心中はいかなるものだったのか。
「もう短期決戦はチームが勝てばそれでいいので。もちろん次の試合も続けて打ちたいですけど、もし僕が普通に凡退しても、チ―ムが勝てばいいかなと思います」
苦しみぬいた1年「個人的な悔しさはあるけど…」
試合後の取材で山川が表情を緩ませたのは、自身の活躍ぶりではなく、チームメートに波及した“相乗効果”について語った瞬間だった。「きょう僕が打ったことで、みんなが気持ちよくバットを振れる状況になったと思うので。こういう試合って大きいですよね。CSを含めて、あまり点数が入っていなかったのも事実ですし。久々に長打が出たり、5安打も打つ人が出たり。それはいいんじゃないかなと思います」。
山川の言葉通り、日本ハムとのクライマックス(CS)シリーズファイナルステージは全6戦で計11得点と苦しんだソフトバンク打線。25日の日本シリーズ第1戦も得点はわずか1にとどまった。一方で、この日の第2戦は周東佑京内野手がシリーズ新記録となる1試合5安打をマーク。柳田悠岐外野手にも3安打が生まれるなど、山川の活躍に続くように快音を奏でた。
山川自身も苦しみぬいた1年だった。レギュラーシーズンでは2軍落ちも経験するなど不振に苦しみ、打率.226にとどまった。CSファイナルでも打率.222、1本塁打、2打点に終わり、日本シリーズ第1戦はベンチスタート。「自分の成績が良かったら絶対に(試合に)出ていますし、悪いと出られないのがこの世界なので。個人的な悔しさはもちろんありますけど、自分の責任なんで」。自身へのもどかしさを隠すことなく明かした。
それでも下を向く時間が無意味であることは十分に理解している。「CSでの悔しさを晴らしたいとかいう気持ちは全くないです。そういう考えよりも、技術をどう向上させるか。それだけなので」。チームを頂上に導いた時こそ、心から笑う。
(長濱幸治 / Kouji Nagahama)