劇的勝利に残った“疑問” 105球から中1日の山本由伸がブルペン投球「どうしても仕方なかった」

105球完投から中1日の山本由伸がブルペン投球「行くしかないと思いました」
【MLB】ドジャース 6ー5 Bジェイズ(日本時間28日・ロサンゼルス)
6時間39分の死闘は、決して美しい終わり方ではなかった。ドジャースは27日(日本時間28日)、本拠地にブルージェイズを迎えてワールドシリーズ第3戦に挑んだ。5-5と同点で迎えた延長18回にフレディ・フリーマン内野手がバックスクリーンにサヨナラ弾を放ち、6-5で勝利。シリーズの対戦成績を2勝1敗とした。
両チーム合わせて19投手、計609球を要した大接戦。この数値にはカウントされない、隠れた存在がいた。ドジャースの山本由伸投手は、延長17回の時点で上着を脱いでベンチ裏に消えた。延長18回、ブルペンでは背番号18が投球練習に集中していた。
まさかだった。2日前の25日(同26日)。ワールドシリーズ第2戦で9回1失点完投勝利をマークした。ブルワーズとのリーグ優勝決定シリーズ第2戦に続く9回完投勝利。ポストシーズンでの2試合連続完投は2001年のカート・シリング以来、24年ぶりの快挙だった。
2日前に105球を投じ、トロントからロサンゼルスに大移動。前日26日(同27日)の練習ではグラウンドには姿を見せず、室内での状態の確認やリカバリーに充てた。この日は全体練習が始まる前にキャッチボールを行い、すぐにクラブハウスへ引き上げた。
試合開始から約6時間後。「もうピッチャーもいなかったので、行くしかないと思いました」と、左手にグラブをはめた。「体調的にも今日、行けると思ったので。志願というか……。もう(投手が)いなかったので、準備できると言いました」。デーブ・ロバーツ監督が「次の回(19回)に登板する予定だった」と明かしているように、仮に延長戦が続けばマウンドに上がっていた。
「最初は(ロバーツ)監督が良いと絶対に言わないだろうなと思ったんですけど。(10投手を継ぎ込み)どうしても仕方なかったので、準備しながら話し合おうとなったんです」
今後は「予定通り、投げると思います」…第6戦を視野に先発調整を継続
指揮官は試合後に「ヤマモトは1日休んだけど、登板する可能性があった。私たちが必要とするだけ、彼は投げ続ける。私たちにとって彼が最後の砦だった。選手たちはワールドシリーズを制覇するなら何でもやる」と話している。
本当にそれでよかったのか。山本は「こんな大接戦だったので全員で勝てたのはすごい嬉しかったですし、本当によかったです」と勝利を喜んだ。「(登板すれば)1イニングずつ、止められるまで行こうと思っていました。(今後は)予定通り、投げると思います」と、第6戦のマウンドに備える方向で調整を進める。
27歳は自身の役割を理解して、結果を残し続けている。選手を預かる側は、果たしてどうなのか。ゲームプランを練って試合に勝つこと、チームをマネジメントすること、選手の今後を考えること……。遂行しなければいけない仕事がたくさんある。今宵の白星を、決して美談で終わらせてはいけない。
(真柴健 / Ken Mashiba)