阿部翔太が新境地「腕下げたら痛み消えた」 背水の1年…目指す“うっとおしい”投手像

今季は16試合登板で防御率3.07
オリックスの5年目、阿部翔太投手がサイドスローに転向し、復活を図る。目指すのはサイドでチームの危機を再三にわたって救い、現在は1軍で指導する比嘉幹貴投手コーチ。29歳でプロ入りした“オールドルーキー”が、33歳で迎えるシーズンを新たな姿でチームに貢献する。
「目指すのは、やっぱり比嘉さんです。コントロールもよかったし、僕もフォームをしっかりと固めることができればある程度は投げられるのではないかと思っています」。阿部がチャームポイントのえくぼを作り、笑顔で口を開いた。
阿部は、京セラドーム大阪の地元・大阪市大正区出身。酒田南高(山形)、成美大(現福知山公立大)、日本生命から2020年ドラフト6位でオリックスに入団。1年目は肩痛で4試合の登板にとどまったが、当時、支配下登録を目指して再起を図っていた近藤大亮投手(今季オフに巨人を退団し現役引退)と猛練習を積んで復活。中継ぎとして44試合に登板し、フォークを武器に防御率0.61、22ホールドで新人王候補にまでなった。リーグ連覇、日本一にも貢献し、2023年の3連覇も21ホールドでブルペン陣を支えた。
しかし、2024年は17試合登板、今季も16試合登板にとどまった。足の故障などもあったが、最も阿部を苦しめたのは腰痛だったという。ただ、それがサイド転向につながったという。
「どういう投げ方が一番投げやすいのだろうかと試していたら、腕を下げると痛みがなくなったんです。これまで真上から投げていたのですが、年齢的なこともあって(投げ方が)体に合っていなかったのかもしれません」。フェニックスリーグで少し腕を下げてみたところ、打者の反応がよく、帰阪後に参加した秋季練習で比嘉コーチに相談。サイドスローの先輩の比嘉コーチは「今の時期はいろんなことが試せる。横から投げることもありじゃないかな」と応じ、厚澤和幸投手コーチの了解も得られた。
目標は、もちろん比嘉コーチ。昨季までの現役16年間で通算418試合に登板し防御率2.65、93ホールドで、リーグ3連覇に大きく貢献した。ダイナミックなフォームから打者に向かって投げ込む気迫あふれるピッチングで、緊急登板や走者を背負ったマウンドで数々のピンチを切り抜けてきた。
「比嘉さんのように、右、左の打者に関係なく、嫌らしい、うっとうしいなと思われるピッチャーが、僕が目指すべきところだと思います」。10月28日にはブルペンで直接指導を受け、比嘉コーチが実際に投げて手本を示す場面もあった。
「今は、ボールを体から離さないように指導を受けています。これまでは縦の変化で勝負してきたのですが、横の変化球を磨けば投球の幅も広がり、引き出しが増えるかなと思います」と手応えを感じつつある。
サイドへの転向を決めて約10日。YouTubeでいろんな投手を参考にしている。「比嘉さんを始め、現役ではロッテの横山(陸人)君。メジャーのサイドの人の投球も見て、何が違うんやろか、と研究しています。これだけ人の投げ方を見るのは初めてです」と笑顔で明かす。
大学時代は、冬場の高速道路のインターチェンジで、朝まで冬用タイヤ装着の有無をチェックしたり、スーパーのレジを担当したりするバイトもしたことがある。「(背水の陣?)もちろん。(崖っぷち?)年齢も年齢ですから。でも、うまくいかなくても戻そうとは思っていません。やってやりますよ」。『ガッツしか勝たん!!』でチームを鼓舞した右腕が、自らを奮い立たせた。
〇北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者一期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。
(北野正樹 / Masaki Kitano)