過去10年でNPB1位の「.176」 西武・今井の復調を支えた新たな“武器”

西武・今井達也【写真:古川剛伊】
西武・今井達也【写真:古川剛伊】

シーズン途中に新球・シンカーを習得

 プロ9年目のシーズンを投げ終えた西武の今井達也投手。2年連続の開幕投手を務め、24試合に登板して10勝5敗。自身初の防御率1点台(1.92)を記録し、3年連続の2桁勝利を達成した。いずれも自己最多となる5完投、3完封を記録するなど、キャリア最高のシーズンを送ったといえるだろう。

 6月17日のDeNA戦では1試合17奪三振の球団新記録を樹立した。しかし順風満帆だったわけではなく、7月には月間防御率5点台と不調に陥ったことも。この不調を抜け出すカギの一つになったのが、シーズン中に習得した新球・シンカーだ。

 8月以降からフォークの割合が減少し、代わってシンカーが登場。西武には糸川亮太投手というシンカーの使い手がおり、新球習得の過程では、この同学年右腕からアドバイスをもらったようだ。8月に調子を取り戻したことについても、糸川のおかげだと感謝の言葉を口にしている。シンカーは元々投げていたフォークと同じ落ちる変化球で、左打者に多く使用するというところも同様だが、対右打者の割合が7.6%と比較的高くなっている点は特徴的だ。

 今季の既存5球種の平均球速はストレートが150キロ超、スライダー、チェンジアップ、フォークの3球種が138キロ前後、時折投じるカーブが約125キロとなっており、球速帯が3つに分かれている。一方のシンカーは、その3つのどれにも当てはまらない平均131.5キロとなっており、同じ落ちる変化球であるチェンジアップやフォークとの差別化がされている。シーズン途中に加わった“新たな緩急”を、打者は厄介に感じたのではないだろうか。

 シンカーの奪空振り率は対左、対右どちらにおいても全球種の中で最も高く、特に右打者に対しては35.7%と優れた数値を記録。左打者に対しては空振りを奪うだけでなく、ゴロ割合62.5%とゴロを打たせるボールとしても機能し、18打数1安打10奪三振と威力を発揮。対左打者の被打率は7月以前でも.194と優れていたが、8月以降はさらに良化して.146となっており、シンカーが大いに役立ったと考えられる。

 今季の今井が記録したシーズン被打率.176は、NPB過去10年間の規定投球回到達者の中で第1位。シーズン途中で新球を習得するという、一歩間違えば投球のバランスを崩しかねない大胆な試みが、記録的な好成績につながったと言えるだろう。

 西口文也新監督が就任して迎えた今季は5位に終わり、Aクラス入りを逃した西武。苦しい戦いとなったが、その中でエースとしてマウンドに立ち続けた今井の存在感は抜群だった。今後も変化を恐れず挑戦を続け、そのピッチングでファンを魅了してくれることだろう。

※文章、表中の数字はすべて2025年シーズン終了時点

(「パ・リーグ インサイト」データスタジアム編集部)

(記事提供:パ・リーグ インサイト

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