楽天助っ人が発揮したMLB本塁打王の片鱗 来日1か月で“激変”…顕著だった.182→.336

楽天のボイトは6月に加入、最初は苦戦も8月以降は打率.339、10本塁打
2020年にメジャーで本塁打王に輝いた実績を誇り、25年6月に楽天に入団したルーク・ボイト内野手。最初の1か月こそ数字が伸び悩んだものの、8月以降は打率.339、10本塁打と持ち前の打棒をいかんなく発揮。最終的にチームトップの13本塁打を記録するなど、来日から1か月あまりで日本球界への適応を見せた。今回は、シーズン途中から急激に成績を伸ばしたボイト選手のバッティングをデータで紐解いていきたい。
まず注目したいのがアプローチの変化だ。0、1ストライク時における球種別のスイング率を見てみると、7月は変化球へのスイング率が75.0%なのに対し、ストレートは80.9%と高い数値をマーク。思い切ったスイングを仕掛けやすいカウントにおいて、来日当初は直球を狙う姿勢が見られた。一転して8月以降は、ストレートのスイング率が約10ポイント低下し、変化球のスイング率が80.6%まで上昇。7月とは打って変わり、8月以降は変化球に対する積極性が増していた。ここまで顕著に狙い球が変わっているのを見るに、“変化球への対応”が成績向上のポイントとなっていそうだ。
そもそも、なぜ変化球を狙うようになったのだろうか。その要因として考えられるのが、ボイトに対する相手バッテリーの配球だ。期間を問わず0ストライク時、2ストライク時は変化球の被投球割合が60%を超えるなど、来日当初から変化球中心の攻めとなっていた。さらに8月以降になると、1ストライク時の変化球割合が約16ポイントも上昇。浅いカウントで変化球を投じる割合が一層増えていたのだ。それに応じて、ボイト選手も変化球に比重を置いたアプローチにシフトしたのだろう。
そうしてアプローチを変えた中で、大きな違いが表れていたのが打球性質だ。0、1ストライク時に変化球を打ち返した際の打球性質を見てみると、7月はゴロ打球の割合が半数を占めていたのに対し、8月以降はライナー、フライ打球の割合がアップ。全体の傾向として、ストレートに比べて変化球はゴロ打球となりやすい。当初はその傾向と同様に変化球を「打たされてしまった」ケースが目立ったが、狙いを絞った8月以降は好結果になりやすい角度のついた打球を飛ばせていたのだ。
最初の1か月は変化球に対して打率.182と苦しんでいたが、8月以降は打率.336と成績が劇的に改善。特に0、1ストライク時に変化球打率.441と無類の強さを発揮したのを見ると、アプローチの変更が功を奏したのは間違いないだろう。NPBでプレーする外国人野手にとって、変化球への対応というのが活躍できるか否かのカギとなる。1か月あまりで変化球への対応を確立させたことが、8月以降の成績向上につながったはずだ。
最後にストレートに対する成績。7月はストレート打率が2割台と振るっていなかったのに対し、8月以降は打率.345をマーク。変化球と同様に数字を伸ばしたわけだが、特筆すべきはカウント別の成績だ。0、1ストライク時のストレート成績を見てみると、記録した9安打のうち6本がホームラン。変化球に比重を置いたことでスイング率こそ下がっていたものの、着実に仕留めて長打を量産していた。また、追い込まれた後も打率.344のハイアベレージを記録。8月以降はカウントを問わず直球キラーぶりを発揮したことも、シーズン途中の成績向上に結びついたといえるだろう。
当初の打撃スタイルを変えて、日本球界に見事適応してみせたボイト。チームは4年ぶりとなるAクラス入りを逃したが、後半戦のボイトは他球団にとって脅威の存在だったに違いない。10月中旬には来季の契約締結が球団より発表された。来シーズンは開幕から自慢の打棒を見せつけ、東北に再びチャンピオンの栄光をもたらしたいところだ。
(「パ・リーグ インサイト」データスタジアム編集部)
(記事提供:パ・リーグ インサイト)