元メジャー右腕が提言する、これからの高校野球「選手が燃え尽きないように」

元阪神でメジャーでもプレーした藪恵壹氏【写真:岩本健吾】
元阪神でメジャーでもプレーした藪恵壹氏【写真:岩本健吾】

強打の大阪桐蔭が吉田をKO「3ランで気持ちが切れてしまいましたね」

 第100回全国高等学校野球選手権記念大会は21日に決勝が行われ、大阪桐蔭(北大阪)が金足農(秋田)を13-2の大差で破り、史上初となる2度目の春夏連覇を達成した。ここまで今大会を1人で投げ続けた金足農の吉田輝星投手に、大阪桐蔭が自慢の打線で初回から畳みかけ、5回12失点で降板に追いやった。

 準決勝までの5試合で合計719球を投げていた吉田だが、防御率は2.00と大崩れすることはなかった。なぜ決勝戦で大量失点につながったのか。元阪神でメジャー右腕の藪恵壹氏は「初回にスライダーが暴投となり、先制点を失ったところに鍵がありますね」と話す。

「ピッチャーは試合が始まって、投げながら各球種の感覚を修正していくものです。この日の吉田君は、スライダーがずっと引っかかっていた。初回の暴投の感覚がずっと修正できずにいたんでしょう。確かに、同じ回の藤原君の打席では、左打者の足元に縦に落ちるようなスライダーで見事空振り三振に仕留めた。でも、3回の第2打席には同じスライダーをセンターへ痛打されました。

 修正できなかったのは、肩肘の疲れを感じたのか、数日前の報道にあったように股関節に痛みを感じていたからなのか。吉田君にとって質のいいストレートに加え、スライダーも武器の1つ。これがあまり使えないとなると、苦しい戦いを強いられますよね」

 初回に3点を奪われたが、2回を3者凡退に抑えると、1点を返した直後の3回は1死二、三塁から無失点に抑えた。点差は2点。まだ勝負はどちらに転ぶか分からない状況で迎えた4回に、大きな落とし穴が待っていた。

 味方失策と四球で無死一、二塁とするが、続く柿木蓮はスリーバント失敗。ここを無失点に抑えれば、大阪桐蔭に傾いた流れを引き戻せるかもしれない。そんな1死一、二塁の場面で、前日も3安打と絶好調だった1番・宮崎仁斗に左翼スタンドへ3ランホームランを叩き込まれた。

「吉田君はあの3ランで気持ちが切れてしまいましたね。表情が全く変わってしまった。宮崎君の3ランはカウント2-2から真っ直ぐしか考えられないシチュエーション。それを逃さず捉えた宮崎君は見事でしたが、吉田君にとっては心を折られる一発になってしまいました」

藪氏が気付いた吉田のクセとは…

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