横山楓の支配下再昇格に「こっからだよ」 背中を押した愛妻…感謝した“明るさ”

横山楓が家族に伝えた思い「妻が頑張っているから」
プロ4年目の今季、支配下再登録を果たし中継ぎとして存在感を示したオリックスの横山楓投手。パートで生活費を補い、持ち前の明るさで常に背中を押してくれた愛妻に感謝の1年だった。
「僕とは正反対で、めちゃくちゃ明るくて元気で社交的。子どもたちにとっても楽しいお母さんです。パートで働いてくれた妻が頑張っているから、僕も頑張れたのです」。いつも通り穏やかで優しい口調で、横山楓が愛妻への思いを言葉にした。
横山楓は宮崎県出身。宮崎学園高、国学院大、セガサミーから2021年ドラフト6位でオリックスに入団した。プロ3年目に2軍で47試合に登板し、1勝5敗14セーブ、防御率3.65でウエスタン・リーグの最多セーブのタイトルを獲得したが、2024年10月8日に戦力外通告を受け育成選手として契約した。
支配下を目指す横山楓を支えてくれたのは、2020年に結婚した妻だった。高校3年の練習試合で一目ぼれした相手高校のマネジャー。「学年で1年、年齢で2つ違うんですが、キャピキャピしていて明るいところに惹かれました。僕は意気込んで行くというのが苦手なんですが、家を出る前に『今日、気合入ってる』って言ってくれるんです。少しうっとおしいところもあるんですが(笑)。『やれるとこまでやっていいよ』って励ましてくれました」。
育成になってから、一段と支えてくれるようになった。栄養面を考え弁当を持たせてくれ、パートにも働きに出てくれた。「給料が下がった分、働いてくれています。妻が忙しい中、家事も育児も仕事も頑張ってくれているから、僕も頑張れました」と感謝する。現在は5歳の長男と3歳の長女の4人暮らし。「2人の子どもに1軍のマウンドで投げている姿を見せたい」と、練習後も人気のない室内練習場でネットピッチを繰り返した。
肘をたたんだ変則的なショートアームから繰り出すストレートとフォークが武器の横山楓だったが、ウエスタン・リーグ序盤でリリースポイントを上げてからフォークが鋭く落ちるようになった。奪三振も増えたことで「パワーピッチャーが欲しい」という1軍の要望にマッチし、7月30日に支配下再登録を果たした。
「期限ギリギリまで諦めたくないという思いでやってきました。(自分で設定した)ポイントを一個一個クリアすることを目標にしてきましたから、どんな結果でも考え過ぎないようにしていました。ホッとしたというか、引っ越しをしなくてよかったと安心しました。ダメなら次の道を探さなくてはいけませんから。子どもたちも関西が好きになっていたんで」と、支配下再登録を知った時の思いを明かした。
今季は14試合に登板し、プロ初勝利を含め2勝0敗、4ホールド。防御率1.10。9月14日のソフトバンク戦では、折れたバットが胸に直撃し降板となった曽谷龍平投手の後を継ぎ、2死満塁の場面で緊急登板。佐藤直樹外野手を全てストレートで3球三振に仕留めピンチを救うなど、安定した投球でチームのAクラス入りに貢献した。
「頑張ったね。こっからだよ」と支配下再登録に目を腫らした妻に改めて誓ったのは「プロ入り時から目標にしてきた息の長い選手」だ。「ワンチャンスあれば上がれる世界なのですが、逆にすぐに落ちちゃう怖い世界。1日1日、やるべきことをやって一段一段、上がっていきたいと思います」。5年目も家族一丸で戦い抜く。
〇北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者一期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。
(北野正樹 / Masaki Kitano)