“強運”を呼び込む山本由伸の姿勢 元同僚の忘れぬ姿…No.1投手でも「誰よりも練習」

ワールドシリーズで3勝を挙げたドジャース・山本由伸【写真:ロイター】
ワールドシリーズで3勝を挙げたドジャース・山本由伸【写真:ロイター】

オリックスで3連覇→ドジャースで2連覇

 ドジャース・山本由伸投手はワールドシリーズで3勝を挙げ、シリーズMVPを受賞した。中0日での緊急登板など獅子奮迅の活躍。誰もが“天才”として称える中、オリックス・佐藤一磨投手にとっては、山本の“別の姿”が忘れられない。

「すごいの一言なんですが、ただ単にすごいことをしただけの人じゃないんです4年間、誰よりも練習するところを見せていただきましたから、次元は違うのですが、怠けていられないというか、いくら練習しても足りないなと思いました」。山本がMVPに輝いた直後、佐藤が口元を引き締めた。

 2019年育成ドラフト1位でオリックスに入団した佐藤にとって、2年先輩の山本は憧れの目指すべき先輩だった。同じ高卒で、2年目に1軍で4勝を挙げた実績もさることながら、野球に取り組む姿勢に目を奪われた。

 練習量はチームトップ。外部のトレーナーに師事し、フォームを修正してやり投げ用の器具などを使って体の使い方を工夫した。チーム内で危惧する声もあった中でも、ブレずに自らの道を貫き、2021年に最多勝や最優秀防御率など投手4冠を達成。25年ぶりのリーグ優勝に貢献するなど「日本一の投手」になっても、山本の練習量は減るどころか増えていった。

 ウエートトレーニング室のテレビで、多くの選手らとテレビにくぎ付けになった佐藤は、4-4の9回1死一、二塁から登板した山本を見て「大舞台で連投することを想定して、これまで体作りをやっていたんだな」と思ったという。

 投球内容にも目を見張った。山本は、延長11回1死三塁からストレートの四球を与え一、三塁とした後、外角へのカットボールでファウルを取り、2球目のカーブで追い込むと、3球目のスプリットで遊ゴロ併殺打に仕留めた。「絶対にバッター有利(の状況)じゃないですか。外野フライで同点だし、(内野の)間を抜ければサヨナラのチャンスで、ホームランが出ればサヨナラ。でも、四球で一塁に出してからのピッチングに無駄がないですよね」と分析する。

「コースも間違ってはいません。カーブでバッター(の体)は浮いていましたし、バッターは三振が嫌だし。客観的に見たらヨシノブさんのピンチの場面だったのですが、それをヨシノブさん有利に変えてしまう。僕がいうのも失礼なのですが、あの場面でピッチャー有利に最後まで攻めていけるのはすごいと思いました」と佐藤は脱帽した。

 オリックスでリーグ3連覇を果たした後、ドジャース入りした山本は5年間、優勝を続けている。「勝ち運が強いとか、持っているとか言う人がいるかもしれませんが、そんなのが説明つかないくらいの練習量や取り組みがあるんです。すごい、すごいの一言ですが、ただ単にすごいことをした人じゃないんです。来年もレベルアップして、もっとすごいと言われるんだろうと思います。ああいう姿をみていると、僕も痛いとか痒いとかで休んでいる場合じゃないと本当に思いました」。目標とする先発ローテーション入りに向け、決意を新たにした。

(北野正樹 / Masaki Kitano)

RECOMMEND

KEYWORD

CATEGORY