日本は「どこに行っても清潔」 台湾主砲が実感…カップ麺に見つけた“おもてなしの精神”

台湾代表の林安可はNPB入りも視野
来年3月に行われるワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で野球日本代表「侍ジャパン」は初戦でチャイニーズ・タイペイ代表と戦う。プレミア12で世界一に輝くなど、勢いに乗るチームの注目株として上がるのが台湾プロ野球(CPBL)の統一ライオンズの林安可(リン・アンクウ)外野手だ。
代表メンバーは12月に発表される予定だが、すでに注目度も高い。今オフ、海外FA権を行使しNPBへの移籍も視野に入れている。西武でプレーしていた台鋼ホークスの呉念庭内野手も「パワーが魅力で、選球眼もいい。海外でも十分に通用する」と太鼓判を押す。今や台湾を代表するスラッガーの1人だが、そのキャリアの始まりは意外にも「投手」だった。
今季、打率.318(リーグ2位)、23本塁打、73打点(いずれもリーグ3位)の好成績を残し7年目のシーズンを終えた林は、大学時代は主に投手としてプレーしていた。2018年には楽天の秋季キャンプに参加。NPB入りを目指し入団テストを受けたが、契約には至らなかった。
「マネジメント会社の方から『日本のトライアウトを受けてみないか』と声をかけてもらいました。ピッチャーだったので、中日でプレーしていたチェン・ウェイン投手に憧れていました。技術はもちろんですが、怪我を乗り越えて日本でプレーを続ける姿に刺激を受けました。台湾の先輩たちが活躍しているのを見て、自分もいつか日本でプレーしてみたいと思っていました」
憧れは柳田悠岐「本当にすごい」
2019年、CPBLのドラフトで統一ライオンズから1位指名を受け入団。当初は投手として期待され「将来の二刀流候補」として注目を集めた。
「もともと投手としてドラフトで指名されましたが、二刀流というより『投手と野手どちらもできる』というのが自分の強みだと思っていました。投手としては上手くいきませんでしたが、今こうして野手としてプレーできています。最初は『両方やれるならやってみよう』。そんな気持ちでした」
入団後、コーチの助言もあり、打者としての才能を磨く道を選んだ。2020年には新人王、本塁打王、打点王を獲得し、一気にリーグ屈指の強打者へと成長した。昨年のプレミア12では、台湾代表としてプレー。来春のWBCでも代表入りが有力で、日本移籍が実現すれば大きな注目を集めそうだ。
私生活でも日本への関心は深い。試合以外でも何度も来日しており、日本の文化を満喫している。「大阪のユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)にはよく行きます。今年も行く予定です。次はディズニーランドにも行ってみたいです。日本はどこに行っても清潔で、食事もおいしい。ラーメンや焼肉が好きです」。統一ライオンズの親会社がセブンイレブンを運営していることもあり、日本のコンビニ文化にも関心を寄せる。「カップラーメンに『ここまでお湯を入れる』っていう印があるのが日本らしい。細かいところまで丁寧ですよね」と笑顔を見せた。
そんな林が憧れの存在として名を挙げるのが、ソフトバンクの柳田悠岐外野手だ。「柳田選手のバッティングは本当にすごい。尊敬できます」。豪快な打撃スタイルに、自らの理想を重ねている。投手から打者へ、転機を経て台湾を代表するスラッガーへと成長を遂げた28歳が、長年の夢だった「日本挑戦」に動き出した。
(篠崎有理枝 / Yurie Shinozaki)