朝から鳴るスマホ、ニュースで知った自身の監督解任 2年契約も1年で…5分で終わった“通告”

今江敏晃氏は2024年に楽天監督就任、2年契約も1年で解任となった
2019年限りで現役を引退した今江敏晃氏は、2024年から40歳の若さで楽天の1軍監督に就任した。下馬評が低かった中で球団創設20年目で初の交流戦優勝を飾ったが、シーズンでは3年連続Bクラスとなる4位。2年契約ながら1年での解任となり、それをニュースで知るという“幕引き”となった。
2軍コーチを3年半務め、2023年途中に1軍打撃コーチに配置転換された。最終戦後、首脳陣は年配者から順に球団幹部に呼ばれていった。しかし、今江氏より年下のコーチが先に呼ばれ、自身は一番最後に声がかかった。
「『なんでかな』って思いながら行ったら、球団社長から『監督をやってほしい』と言われて。驚きというか、一瞬『えっ!?』ってなりましたね。1軍監督ってやはり大変な仕事ですから、迂闊に答えられない。『一度持ち帰らせてください』ということで、いろいろ相談して、光栄な話だと思って受けさせていただくことに決めました」
直近2年連続4位だったチームだが、そのオフ松井裕樹投手がメジャーに移籍して退団。絶対的な抑えを失ったことも響き、開幕前の評論家の順位予想は軒並み最下位だった。それでも「むしろ『やるんで見ておいてくださいよ』くらいの感じ。特に気にしていなかったです」。言葉通り、交流戦は13勝5敗でチームを頂点に導いた。しかしシーズンは67勝72敗4分けで4位。最終盤の9月28日から10月6日にかけて8連敗を喫するなど、ロッテとの熾烈な3位争いの真っ只中で失速した。

「選手が頑張ってくれた。僕にとって大きな自信にはなりました」
2年契約だったこともあり、シーズン最終戦セレモニーでは翌年に向けた意気込みの言葉を口にした。秋季練習の日程や、次の春季キャンプでの構想もすでに話し合っていた。翌日午前10時に球団事務所を訪れる約束をしていたため、普段通り家路に就いた。
そして翌日、予定していた起床時間より早く目が覚めた。理由は携帯電話から頻繁になる受信音だった。異変を感じてウェブサイトを開くと、「今江解任」などという記事が出ていた。「ただ、直接何も言われてないし、記事が間違っている事もあるので……」と複雑な心境で訪れた面会場所で、正式に解任を告げられた。「反論する気にもならなかったです。『わかりました』って、たぶん5分間も話していないんじゃないですかね」。こうして今江氏の監督生活は幕を閉じた。
「最後の最後までAクラス争いをしていたので、そこでチームをAクラスにできなかったのは僕としては悔しかった部分ではあります。でも予想がほとんど最下位と言われた中で、選手が頑張ってくれて、早川、藤井、藤平、鈴木翔天だったり、則本をクローザーにしてセーブ王を獲ってくれた。野手は辰己、小郷をある程度チームの軸として頑張らせることができたのは、僕にとっては非常に大きな自信になりました」
現在は野球解説者として活動しながら、韓国プロ野球サムスン・ライオンズのコーチも務めている。「同じスポーツでも文化が違うし若干ルールも違う。そういう現場に入らせてもらうのは非常に楽しいです」と新鮮な気持ちで向き合っている。現役だった18年間を「よく耐え抜いたな」と表現した今江氏。現在42歳。逆境も力に変えてきた男は、今後どんな道を歩んでいくのだろうか。
(町田利衣 / Rie Machida)