侍ジャパンが“未知の難敵”攻略へ 日本球界では対応遅れ…メジャーから2人を招請

来日中のMLB女性審判員ジェン・パウォルさん【写真:宮脇広久】
来日中のMLB女性審判員ジェン・パウォルさん【写真:宮脇広久】

今年8月にMLB史上初の女性審判員としてジャッジしたジェン・パウォルさん

 野球日本代表「侍ジャパン」は6日から12日まで宮崎強化合宿を行っている。懸案の“ピッチクロック対策”の切り札は、メジャーリーグから招いた審判員2人の存在だ。

 ピッチクロックは、投手が球を受け取ってから走者なしの場合は15秒以内、走者がいる場合は18秒以内に投球動作を開始しなければならないルール。違反すれば1ボールが宣告される。打者も制限時間が残り8秒となる前に、打撃姿勢を取らなければならない。メジャーリーグでは既におなじみで、侍ジャパンの大会連覇が懸かる来年3月のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)にも採用されるが、日本のNPBは未導入で、対応が大問題だ。大会連覇の障害にもなりかねない。

 そこで、普段ピッチクロックを実施しているメジャーリーグから招かれ来日したのが、MLB審判員のブロック・バーローさんとジェン・パウォルさん。特にパウォルさんは今年8月9日、ブレーブス-マーリンズ戦のダブルヘッダー第1試合で一塁塁審を務め、MLB史上初の女性審判員として歴史に名前を刻んだ。

 宮崎強化合宿中、10日に行われた広島との練習試合では、バーローさんが球審、パウォルさんが二塁塁審を務めた。侍ジャパンの楽天・村林一輝内野手が打撃姿勢を取るのが遅れ、1ストライクを取られる一幕があった。2人は15、16日に東京ドームで行われる「ラグザス 侍ジャパンシリーズ2025 日本 vs 韓国」の2試合でも審判団に加わる。

 井端弘和監督は「以前から宮崎で(MLB審判員招請を)お願いしたいという要望を、伝えてありました」と明かす。来年3月のWBCの前にも宮崎合宿は予定されているが、「そこからでは遅い。そうこうしているうちに、いきなり(WBCの)本番を迎えてしまうより、僕ら(首脳陣)を含めて、この期間の経験は貴重だと思います」と指揮官はうなずいた。

ストライクゾーンの違いは「神経質になるほどではない」

 練習試合終了後には、侍ジャパン首脳陣とMLB審判員2人が膝を突き合わせ、ピッチクロックの詳細を確認した。井端監督は「(MLB審判員から)『真面目だね』と言われました。『侍ジャパンの選手はタイムも取らないし、このままで十分』だと。練習試合では余裕がありませんでしたが、打者は(1打席に1回まで)タイムを取ることもできるので、慣れていけば自ずとタイムを取れるようになると思います」と語った。

 現時点ではピッチクロックに戸惑いを隠せない選手が多いが、吉見一起投手コーチは「慣れるだけだと思います。最初は失敗していいし、1ボールを取られても構わない。『思いの他、時間が余ってしまった』と言う投手もいますし、初めてでできないのは当然で、2~3回やればわかってくると思います」と心配していない。

 また、MLBとNPBのストライクゾーンの違いを心配する声もあったが、「練習試合では(MLBの球審が)低めを取らない気もしましたが、各審判の個人差もあるので、神経質になるほどではないかなと思います」との見解を示した。

 MLB審判員が侍ジャパンにとって“転ばぬ先の杖”となるか。まずは15、16日の韓国戦で選手たちとのやり取りに注目してみたい。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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