10年無敗でも…「韓国に負けていた」 侍Jの露呈した課題、専門家が警鐘「1-4」

9回に被弾した侍ジャパン・大勢【写真:小林靖】
9回に被弾した侍ジャパン・大勢【写真:小林靖】

2試合で計4発を被弾…日本は岸田の1本のみ

 来年3月に第6回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)を控える野球日本代表「侍ジャパン」は16日、「ラグザス 侍ジャパンシリーズ2025 日本 vs 韓国」第2戦に臨み、7-7で引き分けた。侍ジャパンのトップチームは韓国に対し2017年の「アジア プロ野球チャンピオンシップ」以降、前日の第1戦まで10連勝していたが、勝ち切れず連勝がストップした。

 油断大敵だ。侍ジャパンは7-5と2点リードして8回の守備に就いたが、中日・高橋宏斗投手が韓国の22歳の大砲アン・ヒョンミン外野手に内角の152キロの速球をとらえられ、左中間席へソロアーチを被弾。さらに1点リードの9回、巨人・大勢投手が両打ちのキム・ジュオン内野手に155キロを計測したストレートを右中間席中段まで運ばれ、同点に追いつかれたのだった。

 侍ジャパンは2015年11月に行われたWBSCプレミア12を最後に、韓国に10年間負けていない。かつて“宿敵”といわれた因縁の相手を圧倒している格好だが、現役時代に通算2038安打を放ち、引退後もオリックス、広島などで名コーチとして鳴らした野球評論家・新井宏昌氏は「決して侮れない」と警鐘を鳴らす。

「韓国はパワーがあって、思い切り振ってくる打者が多い。侍ジャパンの投手陣はこの日韓戦2試合で計4本塁打を浴びましたが、全てストレートを打たれたものです。力のあるストレートであっても甘いコースに行けば1発の怖さがありますし、球威がなければ際どいコースであっても持っていかれる。ストレートはよほど注意して投げなければなりません。ウイニングショットにはなるべく変化球を使う方がいい気がしました」と指摘する。

 前日15日の第1戦では11-4の大勝を収めたが、まず韓国に3点を先制され、相手投手陣の11四死球の乱調に付け込んで得点を重ねた。爽快に打ち勝った印象はない。この日の第2戦も12四球を献上され、7得点中4得点は押し出し四球によるものだった。

ピッチクロック、ピッチコムにも「普段通りにできない投手もいた」

「2試合で侍ジャパンの打者が放った本塁打は、(巨人の)岸田(行倫捕手)が第1戦でスライダーに泳がされながら左翼席に運んだ1本のみです。韓国投手陣の強い球を強い打球で弾き返しオーバーフェンスすることはありませんでした。メジャーリーガー不在だった今回、ことパワーでは韓国に負けていたと思います」と指摘。「それを踏まえた上で、WBCのメンバー選考を行い、戦術を練るべきだと思います」と強調した。

 一方、今回の日韓戦はWBCへ向け、使用球の違いに加え、日本プロ野球未導入のピッチクロック、ピッチコムにどう対応するかも課題だった。「リズムが違うためか、普段通りのピッチングができない投手が見受けられました。また、第2戦の球審がメジャーリーグの審判員(ブロック・バーロー氏)で、普段ストライクのはずの右打者への内角球を『ボール』と判定されたシーンが何度かありました」と新井氏は見た。事前の認識、準備が重要になりそうだ。

 来年のWBCで侍ジャパンはまず、この韓国、昨年11月のWBSCプレミア12の決勝で苦杯をなめさせられたチャイニーズ・タイペイ、オーストラリア、チェコとリーグ戦形式の1次ラウンドを戦う。言うまでもなく1次ラウンドで足をすくわれていては、WBC連覇のストーリーは始まらない。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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