大会打率.000、ドラ1が抱えた苦悩 連覇の裏で捨てたプライド…最後に学んだ“自己犠牲”

DeNAから1位指名の小田康一郎は今大会無安打に終わった
有終の美を飾り、主砲にようやく笑顔が戻った。第56回明治神宮野球大会は19日、神宮球場で大学生の部決勝戦が行われ、青学大が立命大に4-0で勝利した。DeNAからドラフト1位指名を受けた小田康一郎内野手は「3番・三塁」で先発出場。3打数無安打に終わり、大会通じて10の0と結果を残すことはできなかったが、今後につながる“収穫”があった。
今春の東都大学野球連盟1部リーグでは3本塁打、秋にはベストナインに輝いた逸材が、今大会では苦しみ続けた。準決勝終了時点で7打数無安打。左太もも裏に炎症が見つかった影響もあり、本来の姿とは程遠い状態だった。それでも、安藤寧則監督は「全く問題ないと思います」と揺るがぬ信頼を口にしていた。
迎えた決勝は、中盤まで緊迫した投手戦の様相。0-0の6回、青学大は連続安打で無死一、二塁という絶好機を演出した。打席に立った小田はここまで空振り三振、右飛に倒れていた。これまでの実績を考えれば、“強硬策”という選択もあった。ただ、安藤監督の指示は犠打だった。
「自分でもバントをしようと思っていた」
主軸としてのプライドを捨て“自己犠牲”に徹した。そして初球、内角低めの難しいコースの直球を見事に一塁線へ転がした。犠打を成功させ、直後の渡部の決勝弾をお膳立てしたのだった。
最終的に「H」のランプを灯すことはできなかった。それでも「最後の試合で自己犠牲の姿勢を学べたということは、今後の成長にも繋がると思います」と表情は明るかった。思うような結果こそ残せなかったが、学生野球最後の試合で良い“教訓”を得たようだ。
(井上怜音/ Reo Inoue)