森友哉が直球助言「おまえに足りないもの」 “スペシャリスト”渡部遼人が「裏切り」宣言

4年目の今季は51試合出場も14打席のみ
オリックスの渡部遼人外野手が、定位置奪取のため森友哉捕手の助言を胸にオフの練習に取り組んでいる。
「レギュラーは僕もあきらめていないんで、森さんに熱い話をしていただいて、より頑張ろうと思いました。球団からは守備と走塁を評価していただいていますが、打撃を向上させて“そこだけじゃない”と、いい意味で裏切りたいですね」。渡部が静かな口調で切り出した。
渡部は桐光学園(神奈川)、慶大から2021年ドラフト4位でオリックスに入団。1年目の春季キャンプで好打、好守、好走塁をアピールし、新人野手でただ1人、開幕1軍をつかんだが16試合出場と1軍定着は果たせなかった。2年目はウエスタン・リーグの盗塁王(20盗塁)に輝き、昨季は打撃フォームを修正して65試合に出場した。4年目の今季は51試合に出場したが、守備固めや代走での出場が多く、打席数は昨季の「81」(66打数12安打)から「14」(10打数2安打)と大きく減少してしまった。
守備と走塁について首脳陣の信頼は厚い。松井佑介外野守備走塁コーチは「大事な場面での代走や守備固めは本当に難しいんですが、守りと足に関してはスペシャリスト。球際に強くチャージも速いし、安心して守ってもらえます」と高く評価する。
「現状で満足していたら成長は止まってしまいます。より上を目指していけるように守備と走塁以外のところでしっかりとやってきたい」と、打撃向上に今季も取り組んできた。しかし、与えられた14打席で結果を残すのは至難の業だった。「14打席しかない中で、どうアピールしていけばいいのか難しかったんです。(バットの)トップの位置が低いのはわかっていたんですが、何とかしなきゃと思いながらとにかく(バットに)当てて何とかしようと、どんどん低くなってしまって」。少ないチャンスを生かそうとするあまり、悪循環に陥っていたと明かす。
打撃を何とかしようとの思いで臨んだ高知市での秋季キャンプで、悩みをズバリと指摘された。初日の11月6日。森から誘われた食事の場で、突然「おまえに今、足りないものは何?」と切り出された。「守れるやろ、足もあるしスローイングも悪くないやろ。あとは、コンタクトだけやん」と続けた森の言葉に「確かにそうだなと思いました」と渡部。
さらに森は「おまえがスタメンで出たら、失点も少なくなってキャッチャーも楽や」と、打撃を向上させてレギュラーを獲ることがチームの勝利にもつながることを語りかけてくれた。「大学時代に福井章吾(捕手、慶大-トヨタ自動車)が『お前がいると全然違う』と言っていましたし、若月さん(健矢捕手)にも言ってもらったことがあります。捕手の方にそう言ってもらえるのはうれしいですね」と感謝する。
秋季キャンプでは、全体練習後の個別練習では森と打撃練習に取り組み、アドバイスも受けた。「森さんの全部が全部、自分に合うわけではないんですが、いろんなヒントをもらいました」。バットを肩に担いだり上げてみたり、日によってフォームも違ったが「一度、大きく変えて違和感がなくなってから自分の感覚とすり合わせるようにしています。見た目(のフォーム)は変わっていないかもしれませんが、動きは変わっています。オフの間にやることが明確になりました」。層の厚い外野にバットで切り込む。
〇北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者一期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。
(北野正樹 / Masaki Kitano)