村上流出より…OBが危惧するヤクルトの“現状” 走り込みが激減、失われた「強い体」

ヤクルト・村上宗隆【写真:加治屋友輝】
ヤクルト・村上宗隆【写真:加治屋友輝】

“ブンブン丸”池山新監督は「明るく兄貴的な指揮官に」

 ヤクルトは今オフ、6年間率いた高津臣吾監督が退いて池山隆寛2軍監督が1軍の指揮官に昇格した。現役時代にスワローズで盗塁王のタイトルを獲得し、ゴールデングラブ賞にも7度輝くなど走攻守3拍子揃った外野手で活躍した野球評論家の飯田哲也氏は、来季のチームについて「いきなり優勝というのは、なかなか難しいでしょう。育てるしかない」と厳しい見方を示す。

 飯田氏にとって高津氏、池山氏の2人は頼れる同僚だった。「高津は日本一、2年連続リーグ優勝。よくやってくれたと嬉しかったですよ。池山さんはとても明るく兄貴的な存在の監督になると思います」。バトンタッチした両者に労いと期待の言葉を贈る。

 ヤクルトは今シーズン最下位に沈んだ。防御率3.59もリーグワースト、打率.234は5位と厳しい数字が並ぶ。飯田氏は現実を見据え、再建に向けて大胆な提案をする。

「村上(宗隆内野手)がメジャー挑戦で抜けます。投手陣も石川(雅規)は大ベテラン、小川(泰弘)も年齢が上がってきた。チーム全体の戦力を考えると、いきなり優勝というのは、なかなか難しいでしょう。育てるしかない。来シーズンから1、2年は勝ちにこだわらず育成が第一でいいのでは。ファンの方には暫く我慢してもらって、選手たちが成長していく姿を楽しみに応援していただけると有難いですね」

 飯田氏は日本ハムが好例と捉える。「新庄(剛志)監督が就任した時も、最初の頃は有力選手があまりいなかった。だから育成から始めて、あらゆる選手を起用しながら適材適所を探っていきました」。戦力が整いつつある今では優勝争いに絡み、今季は惜しくもリーグ2位でフィニッシュした。

 池山体制1年目となる来シーズン、飯田氏はどこに注目するのか。「村上ほどのホームランバッターの代わりは誰もできませんからね。どうしたって長打力は減る。足を使うのか、守り重視でいくのか。池山さんの考え方」。飯田氏は、4番サードの燕の“顔”がいなくなる事で、かなりの変動が見込まれる布陣に興味津々。「やっぱり実績のある長岡(秀樹内野手)、外野を守って今季規定打席に達した内山(壮真捕手)、去年から怪我に苦しんでますけど塩見(泰隆外野手)らが中心になっていくのかな」。

故障者続出…「練習方法の見直しを」 怪我防止には「走る量」が必要では

 来季プロ16年目を迎える山田哲人内野手には愛すればこその叱咤激励。「今年は打率も低く、長打も少なくなった。山田自身もモデルチェンジする時期なんですよ。昔のイメージを捨てて。OBとして厳しめに言いますが、若手が出てきたら控えに回るしかない。このオフと来春のキャンプの過ごし方じゃないかな」。

 攻撃パターンも変化せざるを得ないと見る。「オスナ、サンタナも年齢からか動きがちょっと鈍くなってきている。主砲は簡単には育たないです。なのでホームラン、長打頼みではない戦い方でないと太刀打ちできない。どうやって1点を取っていくか、シフトチェンジしていかないと駄目。やり方はいろいろあるはずです」。バントやエンドランなどの小技も駆使し「これまでとは180度変える野球をしないと厳しいと思いますよ」と話す。

 近年のヤクルトは故障者が続出。シーズンを通して働ける選手が揃わず、やり繰りで賄っていては不安定な状況に陥るのも当然か。「監督を退いた後の高津と話をしましたが、『怪我人が多かった……』と。そこは、悔いが残っているのでは」と慮る。

「キャンプから練習方法とかを本当に見直さないといけない」と危機感を煽る。飯田氏は評論家としてスワローズは勿論のこと、全球団のキャンプを巡回。「どこも以前に比べると、走る量が減りましたね。そうすると、やっぱり怪我をする。選手の自主性に任せると、みんな打撃練習とかウエートトレーニングは凄くやるんですよ。けれど走んない。『昔の人間だから』『今は違うよ』と言われるかもしれないが、ウエートとかだけでは強い体を作るには無理な所があるんじゃないかな……と僕は思っています。やらされる練習も絶対に必要なんですよ」。古巣のみならず、球界全体への提言も付け加えた。

(西村大輔 / Taisuke Nishimura)

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