西武・栗山巧、“引退予告”の真意 優先起用は無し…球団幹部「生きざま見せる1年」

最後の契約更改は2000万円減の来季年俸6000万円でサイン
西武・栗山巧外野手は24日、埼玉県所沢市の球団事務所で契約更改交渉を行った。2000万円減の来季年俸6000万円(金額は推定)でサインする一方、ライオンズひと筋プロ25年目を迎える来季限りで、現役引退することを表明した。同い年のチームメート・中村剛也内野手と並ぶパ・リーグ最年長の42歳が、1年前に引退を“予告”した真意とは──。
「私、栗山巧は2026年シーズン、僕自身25年目を迎えるシーズンを締めくくりのシーズンとさせていただくことを報告します」。球団公式YouTubeが異例のライブ配信を行った契約更改後の会見を、栗山は自らこう切り出した。
1年後の現役引退を表明した上でラストシーズンに臨むケースは、非常に珍しい。栗山はその理由を「(最後の1年と認識した上で)ファンの皆様に、しっかり僕のプレーを見てもらいたい。自分が培ってきた技術を見てもらうことによって、ファンの皆様に支えてもらってここまで来られた感謝の気持ちを伝えたい」と説明した。
編成部門トップの広池浩司球団本部長は「来季もあくまで現役選手として、彼の打撃に期待しています。それと締めくくりの1年ということで、“残す”という部分ですよね。彼は打撃求道者ですから、その生きざまをファンの方々や後輩たちに見せてくれる1年は、われわれとしてもありがたいです」とうなずいた。
栗山の“ラストイヤー予告”は来季、フィーバーを巻き起こし、観客動員やグッズ販売など営業面で球団に利益をもたらす可能性もあるが、だからと言って、優先的に起用していくことはありえないという。広池本部長は「もちろんです。勝つためにやっているのですから。それは本人が一番わかっていると思います」と強調した。
42歳の大ベテランは夏の炎天下の2軍戦にも連日スタメン出場していた
2008年に最多安打のタイトルを獲得し、今季までに通算2150安打(歴代27位、巨人・坂本勇人内野手に次いで現役2位)を放っている栗山。誠実な人柄もよく知られていて、2012年から2016年まで5年間チームのキャプテンを務めるなど、“リーダーシップの権化”として圧倒的な存在感を示してきた。
今季1軍ではわずか11試合出場、打率.087(23打数2安打)に終わり、本塁打・打点はなかった。出場選手登録されたのは4月19日から5月17日までの1か月間だけだった。それでも腐らず、夏の炎天下のデーゲームであっても、2軍戦に連日スタメン出場する大ベテランの姿があった。今季イースタン・リーグでは60試合出場、打率.238(147打数35安打)の数字が残っている。
「栗山本人としては、もっと1軍で打席に立ちたかったはずですが、あのファームでの姿は素晴らしかった」と広池本部長。「私が栗山といろいろ話した中でも、1軍戦では代打として劣勢の時に出て行き、相手の勝ちパターンのリリーフ投手と1打席限りの勝負をするケースが多い彼は、『それはとんでなく大変なことなんですよ』と熱弁していました。それを見越して1軍の投手を打つために、ファームで数多く打席に立っていると言うのです。衰えない気迫に圧倒されました」と述懐した。
栗山は「今季は1軍ではしっかりした成績を出せませんでしたが、ファームで頑張っている若い選手と一緒に練習することができて、発見、学び、気付くことが多く、楽しく過ごせました。そういうものを答えにして皆さんにお伝えできるのが、来シーズンだと思っています」と力強く請け合った。
栗山は会見中、何度か来季を「締めくくりのシーズン」と表現したが、「引退」という言葉はついに1度も使わなかった。「来季もプレーするので、今はそっちの方への思いが強いということです。1年後にまた、その時の気持ちを言葉にさせてもらうことになると思います」と真意を説明。これまでの24年間と同じように調整し、同じ闘志を胸にラストシーズンへ臨むつもりだ。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)