変色した指「夏なのにカイロを…」 病気と闘った34歳、大減俸は「受け入れるだけ」

契約更改を行い会見に登場した西武・森脇亮介【写真:宮脇広久】
契約更改を行い会見に登場した西武・森脇亮介【写真:宮脇広久】

西武・森脇が契約更新…来季34歳「受け入れるだけでした」

「右上腕動脈閉塞症」に見舞われ、直近2年間は育成選手としてプレーしている西武・森脇亮介投手が24日、埼玉県所沢市の球団事務所で契約更改交渉を行い、600万円減の来季年俸1400万円(金額は推定)でサイン。7月13日に34歳となる来季にプロ生命を懸ける。

「プロ野球選手の仕事は1軍で投げることだと思っています。そういう意味では何もできなかったので、(減俸は)受け入れるだけでした」。契約更改を終えた森脇は会見で、悔しさをあらわにした。

 2020年から2022年までは、中継ぎ右腕として1軍で3年連続40試合以上に登板し奮闘。左足をあまり高く上げず、すり足に近い形で体重する投球フォームが特徴的で、イケメンでもファンをざわつかせた。2023年も7月までに31試合に登板し、2勝1敗3セーブ12ホールド、防御率1.95の好成績を残していたが、右腕に異状を覚え同14日に出場選手登録抹消。「右上腕動脈閉塞症」の診断を受け、8月に手術し、翌2024年からは育成選手となった。

「動脈閉塞症」とは、どんな症状を引き起こすものなのか。森脇は「僕が1軍で最後に投げたのは(2023年の)7月12日のソフトバンク戦(北九州)でしたが、右腕が冷え切ってしまい、夏なのにカイロを持ってブルペンへ向かったほどでした。しびれもあり、右手の指先が紫がかっていきました。脈も取れない状態で、病院で血圧を測ろうとしても“エラー”と表示されてしまい、計測できませんでした」と説明する。

 それでも手術後は徐々に回復。現在はほぼ、罹患前の感覚が戻っていると言う。今季はイースタン・リーグで14試合に登板し0勝2敗、防御率3.31。支配下登録期限の7月31日までにお呼びがかかることはなかったが、編成トップの広池浩司球団本部長は「来年の支配下登録の有力候補の1人です」と太鼓判を押す。

西武・森脇亮介【写真:矢口亨】
西武・森脇亮介【写真:矢口亨】

「もう1か月早く調子を上げていたら、今年の支配下登録もあったかもしれません」

 さらに「今年も森脇は支配下登録の候補に挙がっていました。彼が調子を上げ、これなら1軍で行けそうだという状態になったのは7月に入ってからで、もし、もう1か月早くあの状態を迎えていたら、今年の支配下登録もあったかもしれません」と明かす。だからこそ球団も、ベテランの域に入りつつある森脇と来季契約を結んだのだった。

 一方で、実は森脇は育成選手としてプレーしている間にも、1軍に貢献していた。山田陽翔投手が高卒2年目の昨年、投球フォームに悩んだ際に「森脇さんの真似から始めさせていただきました」と明かしている。森脇もキャッチボールをしながら、山田のフォームづくりに協力。これが功を奏して山田は今季、1軍でプロ初登板を皮切りに49試合に登板し、3勝3敗1セーブ17ホールド、防御率2.08と大活躍してブレークを果たしたのだ。

 もっとも森脇自身は「僕もそうでしたが、いろいろな人から教えてもらい、取り入れたとしても、最後は自分の感覚次第です。僕が教えたからというより、山田の努力と技術が生きたのだと思います」と謙遜するばかりだ。

 森脇の1軍復帰を期待するファンの声は、本人の耳にも届いている。「ちょっとしたことで挫けてはいられない、弱いところは見せられないと思っています」と力を込める。どん底を見た者の強みが発揮されるのは、これからだ。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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