25歳で異例の“捕手転向”「チャンスがある」 ドラ1が加入も…球団幹部が語る事情

契約更改後の会見に応じた西武・野村大樹【写真:宮脇広久】
契約更改後の会見に応じた西武・野村大樹【写真:宮脇広久】

「小、中、高ではキャッチャーだった」早実高時代に通算68本塁打

 プロで内野手として7年間プレーし、今季限りで戦力外通告を受けたが、急転直下で捕手に転向。育成選手として再スタートを切ることが決まった。野村大樹内野手は26日、西武と育成選手として再契約を結んだ。年俸は320万円減の1200万円。背番号は「67」から「120」に変わる。さらに驚くべきは、25歳にして捕手登録となることだ。(金額は推定)

 東京・早実高時代には通算68本塁打をマークした右打ちのスラッガーで、1学年上の清宮幸太郎内野手(現日本ハム)とともに中軸を務めた。2018年のドラフト会議では、ソフトバンクに打撃を買われ内野手として3位指名され入団。昨年7月に、齊藤大将投手との交換トレードで西武に移籍していた。これまでプロの1軍戦では一塁、二塁、三塁を守り、指名打者を務めたこともあるが、捕手として出場したことは1度もない。

 既に11月17日に打ち上げた秋季キャンプに参加し、捕手としての練習を開始した。「小、中、高ではキャッチャーだったので、その感覚を思い出しながらやっている感じです」と明かす。「高校とプロとでは、投手のスピードが20キロくらい違う。捕れと言われれば捕れますが、しっかりキャッチングをしながら捕ることやブロッキングは未知数です」と不安を隠せないのが現状だ。

 広池浩司球団本部長は「彼の打撃は単純な打率、本塁打、打点でなく、いろいろな数値を紐解いていくと、優秀な数値を持っています」と高く評価。「その打撃を生かすため、問題は守るところですよね。せっかく高校時代に捕手をやっていたので、捕手でチャレンジすれば出番が増えるのではないか、1軍に上がるチャンスも捕手の方があるのではないかと考えました」と説明する。

長年苦しんだ腰痛「中学時代から1か月置きに痛い、痛くないを繰り返した」

 西武の1軍の今季スタメンマスクは、古賀悠斗捕手が95試合を占め、炭谷銀仁朗捕手が27試合、牧野翔矢捕手が12試合、柘植世那捕手が6試合、古市尊捕手が3試合と続いた。さらに今年のドラフトで明大の“強打のキャッチャー”小島大河捕手を1位指名し、野村が参入する競争は激化の様相を呈している。

 野村は今季、開幕1軍を果たしたものの、13試合出場、打率.171(35打数6安打)、0本塁打2打点の低調で、5月8日に2軍落ち。持病の腰痛に悩まされ、7月に「内視鏡下腰椎突起形成術」の手術を受けてシーズンを終えた。

 野村自身によると「ベルトロッティ症候群」と呼ばれる症状で、「中学時代から1か月置きくらいに、痛い、痛くないを繰り返してきました。今年は本当に“無理”な状態に陥り、手術に踏み切りました」と振り返る。術後の腰は「全く不安のない状態」だそうで、長年苦しんできた腰痛がこのまま消えるとすれば、来季以降へ向けて大きなプラス要素だ。

 戦力外通告を受けた時点で、現役生活の“土俵際”に追い込まれた野村だが、捕手転向という“徳俵”に足がかかった格好。ここからは押し返すだけだ。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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