止まらぬ野球人口減少も…増え続ける女子選手 激変した環境、侍OG感慨「時代は変わった」

野球教室で選手たちに話をする中島梨紗監督(中央)【写真:主催者提供】
野球教室で選手たちに話をする中島梨紗監督(中央)【写真:主催者提供】

三菱UFJ銀行が東京都府中市内で開催、経験者と初心者を分けて指導

 野球人口の減少が指摘されるようになって久しいが、女子に限ると逆に増えており、球界にとって“頼みの綱”と言える。11月30日には三菱UFJ銀行が東京都府中市内で「MUFG ONE PARK by 侍ジャパン女子代表 in 府中」を開催した。女子野球日本代表「侍ジャパン女子代表」の中島梨紗監督と元選手3人がコーチ役を務め、小学生の男女86人が参加して活況を呈した。

 日本は女子野球の最高峰「WBSC女子野球ワールドカップ」で、2008年の第3回大会から昨年の第9回大会に至るまで、驚異の7連覇を続けている。ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)を3度制している侍ジャパン・トップチームに比べると、知名度は圧倒的に低いが、実力と実績は世界断トツなのだ。

 直近の第9回大会では、中島監督がチームを率い、この日コーチ役を務めた川端友紀さん、只埜榛奈さん、田中露朝さんは選手として出場。元選手3人はいずれも昨年限りで現役を引退した。

 野球教室では、参加者を野球経験者と初心者に分け、中島監督が初心者の指導を担当。川端さんは経験者の打撃、只埜さんは内野守備、田中さんは外野守備を受け持った。

 経験者のキャッチボールを見ていると、全身を使った投げっぷり、器用なグラブさばきに驚かされる。昭和の頃は、体幹を捻らず、足も動かさずに横に並べたままボールを投げるような、ぎこちないスタイルを“女の子投げ”などと呼んだものだが、そんな様子は見当たらなかった。

 1989年生まれの川端さんは「私が小学生の時に野球を始めたチームは、女子は私ともう1人の2人だけで、ましてや女子だけの野球教室なんて考えられませんでした」と振り返る。「女子野球の競技人口が増えて、それに伴って環境が整備され、技術も上がっているのは間違いないと思います」と指摘し、「時代は変わりましたね」と感慨深げに目を細めた。

子どもたちに指導する只埜榛奈さん【写真:編集部】
子どもたちに指導する只埜榛奈さん【写真:編集部】

「ゴロを捕球する時に意識してほしいことが3つあります」

 指導はコーチ役が手本を見せながら、丁寧に行われていた。たとえば内野守備を担当した只埜さんは、現役時代にサード、ショート、セカンドをこなした万能内野手。子どもたちに「ゴロを捕球する時には、意識してほしいことが3つあります」と明示した。

 まずは「自分の目の前に横のラインを引き、右投げの場合は右足のつま先をラインに合わせ、左足は半歩前に出して構えてください」。そして「態勢を低くしますが、膝を曲げるのではなく、股関節のところで体を折るようにしてください。膝がつま先よりも前へ出ると、体を素早く動かすことが難しくなりますから」と続ける。

 最後に「いざゴロを捕る時には、転がってくる打球のラインにグラブを合わせてください。まず打球のラインにグラブを合わせ、捕球した位置に軸足(右投げの場合は右足)を送るようにすると、スムーズにスローイングへ移れると思います」と説明した。

 普段は東京都稲城市の男女混合チーム「向陽台スターキッズ」でプレーしている五味ひよりさん(小5)は、チームメートの女子7人と一緒に参加。「私はバッティングが苦手なのですが、腰の回し方を教わって、コツをつかめた気がします。守備での股関節の使い方も印象に残りました」と手応えを得た様子だ。「中学生になったら、府中の軟式女子チームで野球を続けるつもりです」とうなずいた。

 高校、大学、社会人の女子野球部が増え、NPB球団でも西武、巨人、阪神が女子野球チームを運営。女子野球のクラブチームも各地に生まれ、女子が野球に取り組める環境は広がりつつある。この日の府中のグラウンドでも、大きな可能性が“胎動”しているように見えた。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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