3年連続リーグ最少の好結果、無駄な走者なし…日本ハムに浸透する“新庄イズム”

日本ハム・新庄剛志監督【写真:古川剛伊】
日本ハム・新庄剛志監督【写真:古川剛伊】

日本ハムはリーグ2位のチーム防御率2.53、与四球数は3年連続リーグ最少

 日本ハムはレギュラーシーズンでは白熱の優勝争いを演じ、「2025 パーソル クライマックスシリーズ パ」でもファイナルステージ最終戦まで死闘を繰り広げた。惜しくもソフトバンクに敗れたが、投打ともにハイレベルなその戦いぶりは、今季のチャンピオンチームに引けを取らない素晴らしいものだった。

 今回は日本ハムの投手陣の成績をデータで紐解いていく。今季はリーグ2位のチーム防御率2.53をマークし、その他の項目でも好成績を残しているが、その中で特に注目したいのが与四球の少なさだ。これは今季に限った話ではなく、チーム与四球数および与四球割合は2023年から3年連続でリーグトップ。四球による無駄な走者が少ないという点が、チームの大きな強みとなっている。

 与四球を少なく抑える上で重要になるのが初球の入り方だ。表は今季のパ・リーグ全体の投手成績を初球がストライクになった場合とボールになった場合に分けて示したもの。このように、初球にストライクを取れるか否かで与四球割合には大きな差が出てくる。加えて被打率や奪三振割合にも違いが見られ、初球でストライクを取ることができれば、打者との対戦を優位に進められることが分かるだろう。数字で示したこの傾向はおそらく、体感的にも納得のいくものなのではないだろうか。

 日本ハム投手陣は、初球をストライクゾーンに投げ込んだ割合がリーグで最も高く、それに伴って初球ストライク率もリーグトップの数値を記録している。2022年から指揮を執る新庄剛志監督は就任以来、メディアの前でもたびたび「ストライクゾーンで勝負すること」の重要性を説いてきた。初球のストライクゾーン投球割合は4年連続、初球ストライク率は2年連続でリーグ1位となっており、指揮官の考えは投手陣にしっかりと浸透している。

 さらに、初球ストライクの取り方で特徴的なのが、変化球を積極的にゾーン内に投げ込んでいることだ。他チームでは、ストレートと変化球の初球ストライクゾーン投球割合の差は約9%あるが、日本ハムはその差が2.4%と小さく、変化球もストレートと遜色ない割合でゾーンに投げ込んでいる。また、初球の球種別投球割合はストレート39.3%、変化球60.7%となっており、初球に変化球を投じる割合もリーグで2番目に高い。単にストライクを取るだけであれば、制球しやすいストレートをゾーンに投げ込めば良いわけだが、当然ながらそれを狙われ、痛打されては元も子もない。日本ハム投手陣は変化球を上手に織り交ぜることで、初球被打率をリーグで最も低い.307(リーグ平均.323)に抑えつつ、高い初球ストライク率を実現しているのだ。

ゾーン内への積極的な投球が投手有利カウントを生む

 今季の日本ハム投手陣は、打者と決着がついた全打席の中で、投手有利カウントで終わった打席の割合が37.5%とリーグで最も高く、反対に打者有利カウントは26.9%と最も低かった。両者には10.6%の差があり、それだけストライクを先行させ、投手優位の状態で打者と勝負できていたということになる。これはまさに積極的なストライクゾーン勝負の賜物であり、与四球の少なさをはじめ、今季のあらゆる好成績を生む要因になっていたと考えられる。

 2年連続の2位フィニッシュと、新庄政権下で着実に力をつけている日本ハム。しかしそれは逆にいえば、優勝争いに敗れる悔しさ、頂点に立つことの難しさを味わった2年間でもあった。11月22日に行われた「F FES 2025 Supported By Fanatics』で新庄監督が口にした「2位はもうよかです」という思いは、選手、スタッフ、そしてファイターズファンの総意だろう。“新庄イズム”の体現者たちは栄光をその手につかむことができるのか。来季の戦いが今から楽しみだ。

(「パ・リーグ インサイト」データスタジアム編集部)

(記事提供:パ・リーグ インサイト

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