西武「ライオンズカップ」が目指す「野球を楽しく」 中学生に溢れる笑顔
埼玉県のふじみ野リトルシニアが優勝
セミの声にかぶさるように、試合開始を告げる甲高いサイレンの音が鳴った。8月21日は全国高等学校野球選手権大会の決勝試合日だったが、その1時間前にはメットライフドームで「ライオンズカップ 第7回中学硬式野球選抜大会」の決勝が行われている。大会に参加したのは、甲子園で戦いを繰り広げた高校球児より一回り体格の小さな中学硬式野球チーム所属の中学生だ。屋内のドームで、試合中はベンチとスタンドから声援が響いた。
元気が一層際立ったのは、12チーム参加のトーナメントを最後まで勝ち上がった地元・埼玉県のふじみ野リトルシニアだ。明るさが群を抜き、試合中は伸び伸びとプレーしながら常に声が飛ぶ。決勝戦での選手紹介時、西武の1軍の試合さながらに曲が流れると、名前を呼ばれた選手はノリよくスタンドの仲間や保護者に手を振ってグラウンドへ駆け出していった。
ピンチの場面を迎えても、マウンドに集まったふじみ野リトルシニアの選手には笑顔が見られた。こうした風景が、近年は高校野球でもよく見られるようになっている。プロ仕様の広いグラウンドでのプレーとあって、浮足立ったようなミスが他チームには見られたが、ふじみ野リトルシニアのナインはそうした緊張をあまり感じさせなかった。
このようなチームの雰囲気は、深澤仁監督が意図して作り上げたものだ。「友達、選手、仲間が元気になるような言葉をかけられるようにと教えています。いつも勝っているチームではありませんから、負けていて大量点を取られていても、上を向いて明るくないといけないので、どんな局面でも笑顔を見せられるように」と指導している。その結果、トーナメント決勝に5-0で勝利してライオンズカップを手に入れた。
近年、子供の気質の変化や競技人口の低下を受けて、アマチュア球界でよく聞かれるのが「野球を楽しく」の考えだ。西武もこの点を重視しながら、球団として野球振興活動に取り組んでいる。本大会も、プロ野球の本拠地でプレーする機会を提供することで、子供たちが野球を継続するきっかけを作ることが目的だ。
「ライオンズカップ」は2012年以降、毎年開催されている。今年は埼玉県、栃木県、群馬県、茨城県内すべての中学硬式野球チームから、参加基準である「将来の夢に向かって一生懸命活動している」、「所属団体の大会ではなかなか結果が残せない」、「地域の活動に積極的に参加、貢献している」を満たす12チームが選抜された。