「一応、敵なんで」兄との合同トレ“卒業” 鷹への対抗心…川瀬堅斗が決めた覚悟の冬

ソフトバンクで活躍を見せた川瀬晃は兄
オリックスの川瀬堅斗投手が、好不調の波を少なくし安定した投球で信頼される投手を目指している。「5年目でしたが、いい日と悪い日の差が激しくて、そこを埋めていきたい。勝手に信頼されるようになったら、(選手登録)抹消も減ると思います」。いつもは笑顔を絶やさない23歳が、表情を引き締めた。
川瀬は、大分商から2020年育成ドラフト1位でオリックスに入団。3歳年上の兄は高校の先輩でもあり、2015年ドラフト6位でソフトバンクに入団した晃内野手。川瀬は4年目に支配下登録され、目標としてきた開幕1軍を果たした今季は中継ぎとして23試合に登板し、1勝1敗3ホールド、防御率3.66。初勝利は挙げたものの、好不調の波が激しく、調整のため2軍落ちすることもあった。
6年目に掲げるのは「安定性」。投球に対する意識も変える。「(カウント)3-2で打たれたくなくてコースのギリギリ(の球)がボールになるケースでは、低めで勝負する。真ん中でも低めにいけば長打にならないと思うので、考えながらピッチングをしたい」。トレーナーにメニューを組んでもらい、下半身を使うトレーニングでキレのよいストレートを目指している。
昨年オフは、兄と地元でトレーニングを行ったが、今年は1人で大阪の球団施設を使って汗を流している。「もう“抜け出したい”というか」と川瀬。兄弟対決では、まだ1本の安打も許していないが、チームは今季、7勝16敗2分と大きく負け越しソフトバンクの独走を許した。
兄は今季、102試合に出場。サヨナラ打や決勝打などチームのピンチを救う打撃でリーグ優勝、日本一に貢献した。川瀬も初勝利を挙げたものの、まだまだ満足のいく成績は残せていない。「一応、敵なんで」と続けたあたり、プロとしての自覚がライバルチームの選手と一線を画すという行動に表れたようだ。
「初勝利も初ホールドも挙げることができましたが、才木さん(海翔投手)がいい場面で投げて11ホールド。僕ももっとやれると思います。とにかく1軍で1試合でも多く投げ、1日でも長くやることが1番」。現状に満足せず、貪欲に取り組む。
〇北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者一期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。
(北野正樹 / Masaki Kitano)