敗戦の日本代表へ貫いた礼儀 台湾代表が決めた“辞退”…東京Dで味わった幸福

「プレミア12」決勝で日本を破った台湾代表【写真:中戸川知世】
「プレミア12」決勝で日本を破った台湾代表【写真:中戸川知世】

プレミア12で世界一も…シャンパンファイトを行わず

 来年3月に開幕するワールド・ベースボール・クラシック(WBC)。その初戦で野球日本代表「侍ジャパン」が激突するのは、チャイニーズ・タイペイ代表だ。昨年の「プレミア12」決勝で日本を破り、初優勝を飾った記憶も新しい。歓喜の裏でチャイニーズ・タイペイ代表はが恒例のシャンパンファイトを辞退。そこには、日本への深い敬意があった。チームを頂点へ導いた主将、台湾プロ野球(CPBL)の統一ライオンズに所属する陳傑憲(チェン・ジェシェン)外野手が、知られざる当時の胸中を明かした。

 陳は決勝の舞台となった東京ドームについて「すごく綺麗で広い。入った瞬間に『ここでプレーできる選手たちは幸せだな』と思いました。日本式の応援も素晴らしかったです。日本の応援団は音楽やリズムがとても良いですね。台湾は内野で応援していますが、日本は外野から聞こえます。守備の時に後ろから聞こえるので、迫力を感じました」と振り返る。

 東京ドームで歴史的初優勝を果たしたチャイニーズ・タイペイだったが、用意されていたシャンパンファイトを行わなかった。「曾豪駒(ツェン・ハオジュ)監督からの提案だったんですが、私も同じ気持ちでした。東京ドームは日本の選手たちの本拠地です。そこでお祝いするよりも、台湾に帰って祝う方がいいんじゃないかなと思いました」。

 その意見に反対する選手は1人もいなかった。試合後にはチーム全員で焼肉店に集まり、優勝を祝った。「その食事会が、私たちにとっては立派なお祝いでした」。派手な演出はなかったが、チームの絆を深める時間を過ごした。

統一ライオンズ・陳傑憲【写真:篠崎有理枝】
統一ライオンズ・陳傑憲【写真:篠崎有理枝】

WBCで注目の3人「国際舞台でも物怖じせずプレーできる」

 WBCで対戦する日本に対しては「どの選手もトップレベル。誰が出てきても脅威です。全員が要警戒ですね」と気を引き締める。チャイニーズ・タイペイ代表のメンバーはまだ発表されていないが、注目してほしい選手として3人の名前を挙げた。

 打者では、メジャーリーグのインディアンスやレッドソックスなど4球団で計5シーズンプレーし、今年から台湾プロ野球の富邦ガーディアンズでプレーする張育成(ジャン・ユーチェン)内野手、パイレーツでプレーする鄭宗哲(チェン・ツェンチー)内野手。投手では、昨年のプレミア12決勝で日本戦に先発したダイヤモンドバックス傘下でプレーするリン・ユーミン投手だ。特に林には「国際舞台でも物怖じせずプレーできることを証明してくれました」と厚い信頼を寄せる。

 昨年のプレミア12の後、母国では英雄となった陳。高校時代は岡山共生高に留学し、日本で野球を学んだ経験を持つ。オフには日本を訪れ、東京ドームで日韓戦を観戦した。

「高校生の頃はあまり遊ぶ時間がなかったですが、大人になってからは旅行でよく日本に行くようになりました。台湾と時差が少ないというのも旅行がしやすい理由ですが、食べ物も美味しいし優しい人が多い。清潔で気持ちがいい国です」

 勝者でありながら、最後まで敬意を忘れなかったチャイニーズ・タイペイ代表チーム。来春、東京ドームに再びその姿を見せる。

(篠崎有理枝 / Yurie Shinozaki)

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