34歳で戦力外「覚悟していた」 “異例”の提案→即手術「辞めるのもったいない」

ロッテから戦力外となった国吉佑樹【写真:町田利衣】
ロッテから戦力外となった国吉佑樹【写真:町田利衣】

国吉佑樹は今季1軍出場なしに終わりロッテを戦力外となった

 今季限りでロッテを戦力外となった国吉佑樹投手は、現役続行を目指して国内外問わず移籍先を探している。今季は支配下登録後初めて1軍登板なしに終わったが、戦力外通告後に“異例”ともいえる球団の全面バックアップを受けて右足首を手術。34歳は「体が動く限りは老いに抗って少しでも長く野球をやりたい」と、新天地を求めて前を向いている。

 2009年育成ドラフト1位でプロの門をたたき、2年目で支配下を掴んで以来、1軍での登板機会がなかったのは初めてのことだった。春季キャンプ前に肉離れを発症し、その後は上半身のコンディション不良と次々怪我に見舞われた。シーズン終盤には右足首を故障した。

 チームは最下位に沈んだが、自分が空けた1軍の“席”で若き才能たちが成長していた。「毎年危機感とか、怪我をして投げられない時期はプレッシャーになったりは多少なりともあります。でもチームとしてはそれ(若手の台頭)は一番いいことですし、その競争に勝っていかないとクビを切られていく世界をずっと見てきましたから」。だからこそ、球団から告げられた戦力外も「今季はパフォーマンスが上がらずで、年齢を考えても契約がなくなるかもしれないという気持ちはあったので、ビックリした感じはなかったです。ある意味ちょっと覚悟はしていたかなと」と冷静に受け止めた。

 実はシーズン終盤から球団側には右足首の手術を要望していたが、チーム事情からシーズンが終わるまで待ってほしいと言われていた。すると戦力外を告げられた席で思いもよらぬ提案があった。「『足首の手術を希望しているのはトレーナーから聞いているので、それは球団でバックアップする。リハビリ完了まで球団の施設も使っていいし、チームのトレーナーに見てもらってやってもいい』ということでした。そこは本当に感謝して手術とリハビリをさせてもらいました。ありがたかったなと思います」。

海外に目を向ける理由「違う文化の野球に触れてみたい」

 今季が怪我により不完全燃焼だったこともあり、「これで引退するのは自分自身、もったいない感じがしました。万全ならもっとできるという自信もまだあったので、辞めるという選択肢はなかったです」と現役続行は即決だった。そのためすぐに手術に踏み切り、ロッテのサポートを受けながらすでにブルペンでの投球練習が行えるまでに回復している。

 今後については「NPBであれば一番いいかなと思っていましたけど、やっぱり今年投げていないし、手術もしたし、手を出しづらいんじゃないかなっていうのは感じています。だから例えば海外のリーグに行って、今年で言ったら(ヤクルトの)青柳が米国から途中で戻ってきたようなイメージでまた戻ってこられたらいいですし、向こうでしっかりやって、またどこか違うリーグを探す方向でもいいのかな」と説明する。

 仮にNPBではなくとも、社会人や2軍球団など国内にはほかの選択肢もある。それでも海外に目を向けたのは、DeNA時代の2018年オフに豪州リーグに参戦した経験がある。「同じ野球ですけど雰囲気や、野球に対して選手もファンも見方も全く違って、僕の中ですごく影響を受けました。今後引退してからどういう形で野球に携わるかわからないですけど、経験として、日本国内で終わるより違う文化の野球に触れてみたいなというのがあります」と先を見据えている。

 現在34歳。国吉は「引退するって言ったら本当に簡単に終われる世界なので……」とポツリと呟く。しかしまだまだ現役生活に幕を下ろすつもりはない。「いろいろな野球のあり方にも触れていきたいですね。プレーヤーですけど、これからの野球人生はいろいろなところで学んで、経験を積み上げて、今後は分からないですけど、もし指導する機会があったときに引き出しの一つになればいいなと思います」。待ち受ける新たな挑戦に、目を輝かせた。

(町田利衣 / Rie Machida)

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