補強に“今井マネー”は使えない? 21人流出の過去、91敗の屈辱から脱却の真相

西武・今井達也【写真:小林靖】
西武・今井達也【写真:小林靖】

右肩上がりの観客動員、今季は昨季比17万人余り増の173万2073人

 西武は22日、DeNAからFA移籍した桑原将志外野手の入団会見を埼玉県所沢市内で行った。年俸2億円プラス出来高の複数年契約(金額は推定)。日本ハムからFA宣言した石井一成内野手とも入団で合意しており、球団史上初めて、同一年に複数のFA選手を獲得することになる。球団がかつてない補強を進めている要因とは──。

 岸孝之投手(楽天)、浅村栄斗内野手(同)、森友哉捕手(オリックス)、山川穂高内野手(ソフトバンク)……これまでに西武からFAで流出した選手は、通算21人に上る。逆にFAで西武入りしたケースは、1997年の元オリックス・中嶋聡捕手、2007年の元ヤクルト・石井一久投手、2015年の元広島・木村省吾内野手の3人だけ。“出ていく一方”のイメージが強いが、今オフは様相が大きく異なる。

 一方、今季先発ローテの柱を担った今井達也投手と高橋光成投手が今オフにそろってポスティングを申請し、メジャー移籍が濃厚。特に今井に対するメジャー球団の評価は高く、契約総額に基づいて算出され西武に支払われる譲渡金は、かなり高額になると見られている。

 ただし、球団関係者は「ウチが今オフ、複数のFA選手を獲得した背景を『“今井マネー”が入る予定で、例年になく資金に余裕があるから』と分析する向きがありますが、それは誤解です」と指摘する。

 というのは、球団では会計上、FA選手を含む選手の年俸や契約金は「事業費」から賄われ、観客動員によるチケット収入、広告収入、グッズなどの物販収入などが原資。一方、ポスティングの譲渡金は「純利益」として扱われ、直接補強費として使うことはできないという。

 この理論でいけば、“今井マネー”ではなく、観客動員増が補強戦略を後押ししているとは言えそうだ。西武のチーム成績は直近3年間で5位、最下位、5位と低迷しているが、観客動員は右肩上がり。今季は昨季比17万6793人増の年間173万2073人を記録した。球団史上ワーストの91敗を喫して最下位に沈んだ昨季でさえ、前年比13万人余り増の155万5280人を動員していた。

「ライオンズは強くなければ」1986年からの9年間にリーグV8回、日本一6回

 広池浩司球団本部長は、FA選手複数獲得の要因を「それはもう私だけでなく、球団全体の危機感。このままでは、なかなか(ファンに)納得してもらえないですし、(球団の)存在意義がない。ライオンズは強くなければならないと思います。ここで立ち上がろうというのが球団全体の総意としてありましたので、動きました」と説明する。1986年から1994年までの9年間にリーグ優勝8回、日本一6回を誇った名門の復活に、並々ならぬ決意をうかがわせた。

 チーム成績に関わらず増え続けるファンの声援と、球団の異例のFA補強が上位進出に結びつくだろうか。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

RECOMMEND

KEYWORD

CATEGORY