2年連続0発…ロッテ・安田が直面する壁 元コーチが不安視する精神面「自分を見失う」

ロッテ・安田尚憲【写真:古川剛伊】
ロッテ・安田尚憲【写真:古川剛伊】

前ロッテコーチ・大塚明氏、8年目・安田の現状に言及

 未完の大器から純粋さが失われつつある――。ロッテでチーフ打撃コーチ兼走塁コーチを務めた大塚明氏は今オフ、32年間所属したチームを退団。入団後初めて球界を離れ、来年は外からプロ野球を見守る。ロッテ一筋だったプロ野球人生で、コーチを務めたのは選手兼任時代を含めて16年。その半分の8年間指導してきた2017年ドラフト1位・安田尚憲内野手の現状に言及した。

「安田にはかなり大きな期待をしてきました。三塁手として通算500試合以上(537試合)出ているし、今いる他の選手より経験があります。だからずっとハッパをかけてきました。ポジション的に三塁、一塁を守る選手は、やっぱり10本台の後半はホームランを打ってほしい」

 履正社高で通算65本塁打。和製大砲として期待を受け、入団1年目の8月に1軍デビューを果たすと、シーズン終盤にはプロ初本塁打を放った。2年目はイースタン・リーグで19本塁打、82打点を記録して2軍の2冠王に。3年目の2020年からは1軍で4年連続100試合以上に出場し、シーズンの本塁打数も6→8→9→9と順調に成長を示しているように見えた。

「そこまでは順調に打っていたんですよ。でも一番いい状態で、さあここからという時にブロッソーが来たんですよ」。優勝争いに加わっていた6年目の2023年。チームは終盤戦を見据えて7月末にMLBブルワーズのブロッソーを緊急補強した。安田と同じ三塁を守る新助っ人。安田は一塁に回る機会が増え、8、9月はともに打率1割台と打撃の調子を崩した。

 結果的に打率.238、9本塁打、43打点。「きっかけをつかんで、このままいい感じでいきそうだなというところに助っ人が来て、なかなかうまくいかなかった」。7月末に補強した助っ人をチームが優先するのは当然の策。「安田は運がなかったですね」。ブロッソーは1年で退団したが、安田にとっては悪い流れが続いた。

 翌2024年は開幕後に腰痛を発症して2軍落ち。本来の調子を取り戻せないまま1、2軍を行ったり来たりの日々。出場55試合と大幅に出番を減らし、打率.228、0本塁打に終わった。今季は93試合出場と持ち直したものの打率.243と不本意な成績。2年連続0本塁打と持ち味を発揮できなかった。

元ロッテ・大塚明氏【写真:尾辻剛】
元ロッテ・大塚明氏【写真:尾辻剛】

本拠地は左打者にとって難しい逆方向への本塁打

 本拠地のZOZOマリンスタジアムは左翼方向から強い海風が吹くことが多く、左打者が逆方向に本塁打を放つのは難しい球場の1つ。「左打者のホームランは引っ張ることでしか生まれないことが多い球場です。ただ、中堅から逆方向を意識した打撃をしないと安田のいい状態を保てません」。強引に引っ張る形では、本来の良さを生かせないと指摘する。

 188センチ、100キロの恵まれた体格。それでも力任せに打ちにいって通用するほどプロは甘くない。「引っ張りにいくと自分を見失うと思います。反対方向に打っていきながら、たまたまタイミングで早くバットに引っかかって、引っ張ってホームランになるのが理想」と説明した。

 まだ26歳の未完の大器。「元々、とても素直で純粋な性格。人間性が素晴らしく、チームリーダーに育てば、チームにとって大きい」。誰もが素材の良さを評価する存在。これからの努力次第で未来は変わってくるが、大塚氏には最近の様子を見ていて気になる点があるという。

「年を重ねて、年下の選手が入ってきて、純粋に野球に向き合えていないように見えました。そんな中で試合で使ってもらえないとか、いろんなことがあって、それまで持っていた純粋さが自然と失われていっているのがチラホラ見えていました。彼には人柄の良さがある。そういった方向には行ってほしくないですね」

 邪念を捨て、純粋に野球と向き合い続けてほしい。それがチームを離れる大塚氏からのエールであり、“覚醒”の鍵となるのかもしれない。

(尾辻剛 / Go Otsuji)

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