故障者続出で…オリ厚澤コーチが感謝する“存在” 窮地救った164回1/3「本当に助かった」

厚澤コーチが見る「上下しない数字」
今季、3位に終わったオリックスは投手陣に故障者が続出した。苦心の投手起用を強いられた厚澤和幸投手コーチに、1年を振り返ってもらった。「けが人が出ても、僕は戦力ダウンとは見ていません。その時にいるメンバーがその日のベストメンバーだと思っています。誰がいなかったとか、何人故障しているとかは全くの言い訳なんで。勝たなければいけないという中で、3日、1週間、1か月をみていつも通りやっていました」。いつも通り、静かな口調で切り出した。
今季は春季キャンプ中に宇田川優希投手、吉田輝星投手が離脱し、トミー・ジョン(TJ)手術を受けた。古田島成龍投手も調子が上がらず、小木田敦也投手もマウンドに立つことができなかった。そんな中で中日から移籍した岩嵜翔投手や育成出身の才木海翔投手、川瀬堅斗投手のほか、7月にともに支配下登録された横山楓投手や入山海斗投手ら新戦力が故障者による“穴”を埋め、ブルペン陣を支えた。
「新戦力となった選手たちは、故障者が万全だったらチャンスがなかったかもしれないですね。そういう意味で、生きる人もいるんです。来年、帰ってくる人もいるし、引き続きアピールする人もいる。それがチームなんです」。与えられた戦力の中で最善を尽くす。「野球って数字でみられてしまうのですが、優勝した時でも一番よくできたとは思っていないし、Bクラスでも自分の中では頑張ったと思う時もあります。預かったピッチャーを今時、ふさわしい言葉ではないかもしれませんが、愛と信念を持って接するのが、僕のコーチとしての仕事なんです」と、矜持を語る。
そんな中で「本当に助かりました」というのが、九里亜蓮投手の存在だ。広島から国内フリーエージェント(FA)権を行使して移籍した今季、25試合に登板し、チームトップの11勝(8敗)を挙げAクラス入りに貢献した。「年間143試合あって(延べ)143人の先発投手が絶対に必要なんです。亜蓮が160イニング以上(164回1/3)投げてくれたことは、現場を預かる人間からすれば助かりました。違うチームから来たベテランが、若い子たちに惜しみなくアドバイスをしてくれました」とマウンド以外での貢献度も高く評価する。
一方で、エースの宮城大弥投手は万全なコンディションではなかったものの、23試合に登板しキャリアハイの150回1/3、165奪三振を達成。曽谷龍平投手も上半身のコンディション不良で途中離脱はあったものの、自己最多の8勝(8敗)を挙げた。
「宮城はフィジカル面が万全でない中で、これだけ投げてくれました。みなさんは勝ち星をみていますが、僕は全く見ていません。勝ちも防御率も運がつきまとうんです。試合数とイニング数だけは上下しない数字ですから。若い子たちがみんないい経験をしています。それをどのように生かすのは本人たちで、僕らもアシストします」。2026年には故障者が相次いで復帰する見込み。高いレベルでのベストメンバーで臨む。
〇北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者一期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。
(北野正樹 / Masaki Kitano)