281億円予想→まさかの“5分の1契約” 村上宗隆への現地の分析…岡本和真への影響は?

ホワイトソックスの入団会見に臨んだ村上宗隆【写真:ロイター】
ホワイトソックスの入団会見に臨んだ村上宗隆【写真:ロイター】

米メディアが辛辣分析「一塁手としても十分な能力は期待できない可能性」

 ヤクルトからポスティングシステムを申請した村上宗隆内野手が、ホワイトソックスと2年総額3400万ドル(約53億2000万円)で契約したことに多くの米国ファンは驚いた。米移籍情報サイト「MLBトレード・ルーマーズ」では8年総額1億8000万ドル(約281億5000万円)の契約が予想されるなどメガディールが期待されていたが、蓋を開けてみれば総額はわずか5分の1程度。その原因はどこにあったのだろうか。

 米野球専門誌「ベースボール・アメリカ」のジェフ・ポンテス氏は、ポッドキャスト番組「ファウル・テリトリー」に出演した際、予想できた結末だと言い切った。

「(契約総額は)本人や代理人が予想していたよりもはるかに低かっただろうが、コンタクト能力の不足、打球の質がメジャーで通用するかは、常に村上について回った疑問符であり、三塁手としての適性はメジャーレベルではないことも明らかだった」

 またポンテス氏は、ホワイトソックスが一塁手での起用を考えていることを把握した上で、「一塁手としても十分な能力は期待できない可能性がある」というスカウトの評価があることも付け加えた。

 村上の評価が低い点についてはアナリストらも「打率が低く、三振の多い指名打者を起用し続けるチームは自らを縛りつける可能性がある。その上でコーナー内野手(一塁、三塁)としての守備力にも疑問符はついてまわる」と指摘し続けていたが、村上には並外れた打球速度、25歳の若さなどから十分に将来性を期待できるという声もあった。つまり、メジャーでも一級品の“優れた素材”であると言われていた。

 フリーエージェント(FA)選手の契約を正確に予測してきた実績を持つ米スポーツ専門メディア「ジ・アスレチック」のティム・ブリトン氏は、同じような見方をしていた記者の一人だ。

“2人の日本人選手”の先例…米記者が引き合いに

「日本で56本塁打を放ったことのある村上の将来的な可能性は、フィリーズのカイル・シュワーバー外野手(2025年成績:56本塁打、132打点、OPS+150)、あるいはア・リーグ新人王を獲得したアスレチックスのニック・カーツ内野手(2025年成績:36本塁打、86打点、OPS+173)に匹敵する。しかし、筒香嘉智外野手と似たような結末を迎える可能性も高い」

 筒香はNPBで2016年にリーグトップのOPS1.110、メジャー移籍前年の2019年にもOPS.899を記録していたが、MLBではレイズなどで計3シーズンを過ごし、通算で打率.197、18本塁打、OPS.630、OPS+76という低調な打撃成績に終わった。また、守備では両コーナーの内野、外野を守ったものの指標はほとんどがマイナス評価で、通算WARは-2.3だった。

 ブリトン氏は村上の成績を予測するうえでもう1人考慮すべき選手として、岩村明憲氏の名も挙げている。レイズ、パイレーツ、アスレチックスで計4シーズンをプレーして残した通算成績は打率.267、16本塁打、OPS.720、OPS+92、WAR4.5。内野手としての守備力では見劣りしなかったものの、長打力という点では日本時代から大きく数字を落とした。ヤクルト在籍時の2004年には44本塁打を放つなど、渡米前年の2006年まで8年連続で2桁本塁打をマークしていたが、MLBではルーキー時の2007年にマークした7本塁打が最多だった。岩村氏が村上と同じヤクルトでプレーし、打者有利の神宮球場を本拠地にしていたことも、米国のアナリストたちは「気になる点」と指摘していた。

ヤクルト在籍時の村上宗隆【写真:小林靖】
ヤクルト在籍時の村上宗隆【写真:小林靖】

「岡本はFA市場で村上よりも有利な条件を得る」理由とは?

 そして、米国にはかねてこんな厳しい評価があるのも事実だ。

「日本人投手は米国でも日本時代同様の成績を期待できるが、打者は日本時代の数字から差し引いて考えなければならない」

 イチロー氏と大谷翔平投手を除き、日本時代と同様の打撃成績をメジャーで残した選手はいない。そんな背景もあり、村上の契約には“期待値”より“リスク回避”がついて回ることになった。

 村上の去就が決着した後、多くのファンやアナリストは日本からメジャー移籍を目指すもう一人の打者である岡本和真内野手(巨人)の契約に注目している。村上同様の評価に終わるのか、それとも村上以上になるのか。「ジ・アスレチック」のケン・ローゼンタール記者は「ファウル・テリトリー」に出演した際、こう断言した。

「岡本はFA市場で村上よりも有利な条件を得ると予想する。彼は村上と比べて疑問点やリスクがかなり少ない。高いコンタクト能力があり、三塁の守備はいずれ一塁へ移る必要も出てくるかもしれないが、それでもそこそこはこなせる」

 ローゼンタール氏は、パイレーツが岡本争奪戦における隠れた有力候補になる可能性があると予想している。パイレーツは現在、長年の沈黙を破り“投資モード”に入っている。サイ・ヤング賞右腕のポール・スキーンズやババ・チャンドラーといった若きエリート投手陣を揃え、このオフはレイズから31本塁打の二塁手ブランドン・ラウと外野手ジェイク・マンガムをトレードで獲得。さらにレッドソックスからは有望外野手のジョスティンソン・ガルシアもトレードで加え、パドレスからFAとなっていた左打ちの一塁手ライアン・オハーンと契約合意に達したと報じられた。

 パイレーツにとって「三塁手・岡本」は今オフ補強のラストピースなのか。十分な年俸で契約する可能性を秘めているとローゼンタール氏は見ている。

(笹田大介 / Daisuke Sasada)

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