寮生より早い「朝7時半」始動 持ち続ける“正捕手”の矜持…21年目・炭谷銀仁朗が自覚する役割

西武・炭谷銀仁朗【写真:小林靖】
西武・炭谷銀仁朗【写真:小林靖】

シーズン143試合に出場?「心構えは変わらない」

 西武21年目のベテラン・炭谷銀仁朗捕手が連日、本拠地・ベルーナドームで“アーリーワーク”を続けている。13日午前も、炭谷が「お兄ちゃん」と慕う25年目の中村剛也内野手とともに本拠地球場でマシン打撃を慣行。互いの打球角度や飛距離を品評しながら、すでにB班(高知・春野)スタートが内定している春季キャンプに向けた調整を進めている。

 炭谷が毎朝、都内の自宅から球団施設に到着するのは午前7時半前後。ベルーナドームに隣接する若獅子寮に暮らす寮生よりも早い動き出しだ。

 炭谷は「球団施設は朝7時から空いている。(朝が早い)キャンプのことを考えると(1日の生活)リズムが一緒になった方が楽ですし」とすでに体内時計をキャンプ仕様にセットし終えている理由を語る。

 その炭谷にとって今季は2014年シーズン以来、12年ぶりの“試練の年”となる。12年前の森友哉入団以来となる「強打の捕手」小島大河捕手(明大4年)がドラフト1位で入団してきた。

「持ち味であるバッティングをアピールしたいですし、キャッチャーなので守備面も成長していきたい。1軍でしっかり活躍することと、新人王というタイトルを狙って頑張っていきたいと思います」という小島に対して、西口監督はDHや他のポジションでの起用を否定している。

 現実的には昨季、捕手陣でチームトップの95試合でスタメンマスクをかぶり計112試合に出場した5年目の主戦候補・古賀悠斗捕手を小島がどこまで脅かせるかが当面の焦点となろう。そこを7年目の柘植世那捕手、8年目の牧野翔矢捕手らが追い掛ける構図。引き出しが多く、もうひとつ調子の上がらない投手、トラブルを抱えた投手をサポートしながら調子を上げていく。またはクロスゲームの試合終盤、ブルペンで逃げ切りを図る際の“抑え捕手”といったポジションが「困った時の知恵袋」炭谷に与えられそうな役割だろう。

 それでも21年目のベテラン捕手は「今でも143試合の全てに出場するつもりか?」の問いかけに「現実的には無理。そうならないと思いますけど、その準備と体は持っているつもりです。心構えは変わらない。じゃなかったら、もうやったらあかんです」と変わらぬ正捕手へのこだわりを語った。

2年目のジンクスの左腕に「今の段階で決めつけることはない」

 内外野と捕手。全てのポジションで即戦力となる新戦力を補強した今季の西武は西口監督が「レギュラーはネビンだけ」と語り、他の7ポジションはフタを開けるまで誰がどこで開幕スタメンを勝ち取っているか分からない期待感がある。

 西武で初めてB班スタートを切る炭谷も「(首脳陣の起用法が)どういう感じになるかはちょっと始まってみないと分からないですけど」と前置きしながら「チームが勝つために何ができるか、どういう準備をしておくかは常に思っていること」とチームプレーヤーとして勝利に必要な“駒”となる姿勢を強調する。

 38歳という年齢的にも、球団からは若手捕手陣の教育係としての期待も掛けられている。「言われてはいます。でも、それは相手が聞きにきてこそ? そうですね」と語る炭谷は小島や古賀悠らに対して、経験がモノをいい、1つしかない「キャッチャー」というポジションを争うライバルというスタンスをあくまで崩さない。

 その一方で「それが、チームが勝つためだったりとか、そのピッチャーのためになることだったりとかだったら言わないといけないと思います」と試合中に気付いた重要事項については、あえて若手捕手陣に進言していく構えも語っている。

 また、ルーキーイヤーの2024年シーズンに登板21試合中20試合でバッテリーを組み10勝6敗、防御率2.17で新人王に輝いた武内が2年目の昨季、左肩のトラブルもあり4勝5敗、防御率5.26と成績を下げたことにも独自の見解をこう語った。

「いろいろあるんすけど、組まされている意味とかも考えながら、育ててくれ、いろんな経験をさせてやってくれというんやったら、やっぱり段階とか順序が必要です。いきなり全部あれやれ、これやれといっても無理なんで。武内もそうでしたけど、段階ごとにいろいろ、こうしていこうか、ああしていこうかという風に(新人王を獲った)一昨年はやっていたので。再生プラン? それはあるんすけど、今の段階でこいつはこうやな、というのはない。話し合いながら、その日の状態とか対戦相手とか、(オフに)どうしてきたというプロセスも見ないといけないし。去年はいろいろ僕が思うこと、何がとはちょっと言えないですけど、原因はいろいろあるなと思っているんで。(サインを出す)根拠となるすり合わせをしていきたい」

 各ポジションとも、キャンプから開幕に向けたレギュラー争いは戦国模様だが、今年もベンチに炭谷がいるであろう安心感だけは変わらない西武だ。

○著者プロフィール
東京都生まれ、埼玉育ち。早大卒業後、東京スポーツ新聞社に入社。整理部を経て野球担当。ヤクルト、西武、ロッテ、日本ハム、MLBなどを取材。2026年1月からFull-Count編集部に所属。

(伊藤順一 / Junichi Ito)

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