予想外の“低評価”も…村上&今井に残ったビッグマネーの可能性 現地が読み解く「契約詳細」

長期契約へのリスク要因となった「空振り率」と「耐久性」
2026年を迎え、ポスティングシステムを利用してのメジャー移籍を目指していた2人の日本人スターが、MLBのチームと契約を結んだ。先発投手の右腕・今井達也(前西武)と右打ちのコーナー内野手(一塁、三塁)・岡本和真(前巨人)である。
今井は、投球回数に応じたインセンティブで最大6300万ドル(約99億7600万円)まで増額可能な3年総額5400万ドル(約85億5100円)でアストロズと契約。一方、岡本は昨年のア・リーグ王者ブルージェイズと4年総額6000万ドル(約95億円)で合意した。これにより、昨年末にホワイトソックスと2年総額3400万ドル(約53億8400万円)で契約した村上宗隆(前ヤクルト)とともに、2026年にMLBデビューを果たすNPBスター選手“ビッグスリー”の新天地が決まった。
多くのMLBアナリストは、村上と今井が最終的に合意した契約金額にやや驚いている。両選手とも当初予想されていた契約年数、金額をはるかに下回ったからだ。米データサイト「ファングラフス」は村上に7年総額1億5400万ドル(約243億8590万円)、米メディア「ジ・アスレチック」は今井に8年総額1億9000万ドル(約300億8650万円)の契約を予測していた。
ただ、MLBネットワークのジョン・モロシ氏ら球界関係者やアナリストは、村上の高い三振率を「球団が長期契約を結ぶには懸念が大きすぎる」と指摘。25歳と若い村上の将来的な成長の可能性やパワーポテンシャルを認めつつも、MLB球団側は高い空振り率がメジャーの打者として成功を妨げる恐れがあるとして、長期契約に消極的となっていた。その流れからホワイトソックスは短期での“実力証明契約”を提示。村上は自身の能力がメジャーで通用することを示せれば、2年後に大型契約を獲得できる可能性を残した。
また、村上と同様に球団やアナリストは27歳の今井の潜在能力を認め、多くの関係者が「ナンバーワン先発投手になる素質がある」と評価した。しかし、小柄な体格と耐久性への懸念が長期契約締結のリスク要因となったようだ。
MLBネットワークのスコット・ブラウン氏はポッドキャスト番組「ファウル・テリトリー」の番組内で「今井には先発ローテーションの軸となるポテンシャルがあると思う。プレーオフの先発を任せられる投手だ。だが業界は『必ずしもそれを信頼できず、リスクが高すぎる』と判断した」と述べた。
その後、「ジ・アスレチック」のアストロズ担当であるチャンドラー・ローム記者と契約のメリット、デメリットについて番組内で議論。ローム記者も「今井のポテンシャルを疑う者はいない。だが市場は耐久性に懸念を抱いていた」と語っている。その理由は今井の小柄な体格と、過去最多でも2024年に173回1/3しか投げていないイニング数にあると指摘。過酷なメジャーでの投球に対する耐久性に疑問符がついて回り、各球団は「リスクがある投手」として扱ったという。結果、アストロズとの短期契約は、今井が故障したり不振に陥った場合の「安全策」になると論じた。
岡本は最年長も、球団側は「リスクの高い契約と見なさなかった」
その一方で、1、2年目終了後に契約を破棄してフリーエージェント(FA)になれる「オプトアウト」の権利が今井側についたことで、26、27年シーズン後にFAを選択できることとなった。1年目から好成績を残せば、より高額な契約を結ぶ機会が得られる。今井にとってもメリットを残した契約と言えるだろう。
ツインズなどで三塁手として活躍した米メディア「ジョンボーイ・メディア」アナリストのトレバー・プルーフ氏は、ポッドキャスト番組「ベースボール・トゥデイ」に出演した際、この契約はアストロズと今井双方のためになると評価。プルーフ氏は当初、今井がより高額な契約を獲得すると予想していたことを認めつつ、共同司会者のクリス・ローズ氏に「この契約はお互いにとって素晴らしい。リスクが低くリターンが大きい」と力説した。
その根拠として、アストロズが年間1800万ドル(約28億6000万円)というMLBにおける「先発4番手の投手」の相場に見合った契約を結べたことに言及したうえで、今井には「1番手か2番手クラスの先発投手」としてのポテンシャルがあると指摘。シーズン終了後にオプトアウトの権利がついていることについても称賛した。
29歳の岡本の契約については、予想通りの金額で合意したため議論は少なかった。ローズ氏は「ベースボール・トゥデイ」の番組内で、岡本が村上のような選手とは異なり、安定した高いコンタクト率とより信頼できる守備力を持つため、球団側が「リスクの高い契約と見なさなかった」と語った。村上や今井とは異なり、岡本のスキルセットとNPBでの成功が根拠となり、MLB球団側はメジャーでも通用する可能性が高いと評価している。そのため、最年長であるにもかかわらず、3人のNPBスター選手の中で最も長期の契約を獲得する結果となった。
(笹田大介 / Daisuke Sasada)