保険承認のため選手は3つの健康状態区分に分類されるが…
待ちに待ったワールド・ベースボール・クラシック(WBC)開幕が迫る中、多くの選手やチームが高い障壁に直面する事態となった。WBC参加選手の保険契約である。30人の最終ロースターは2月3日が提出期限だったが、保険規制の強化と保険料の高騰により、多くの有力選手がメンバーから外れる結果となった。
目立つのはフランシスコ・リンドーア内野手、カルロス・コレア内野手、ホセ・ベリオス投手、ビクター・カラティニ捕手、ジョバニ・モラン投手(いずれもプエルトリコ)、ホセ・アルテューベ内野手(ベネズエラ)といったスター選手の不在だ。
米メディア「ジ・アスレチック」のケン・ローゼンタール氏は米ポッドキャスト番組「ファウル・テリトリー」の中で「前回大会以降、保険は大幅に値上がりした。保険会社はより厳格になった。それは2023年のWBCで起きた事態の結果だ」と指摘。これは前回大会でエドウィン・ディアス投手(プエルトリコ)とアルテューベが負った重大な負傷を指している。ディアスは2023年に年俸1965万ドル(約26億5000万円)の契約を結んでいたが、同大会で右膝を負傷して同年のシーズンを全休。年俸2600万ドル(約40億円)の契約を結んでいたアルテューベは、大会中に死球を受けて右手親指を骨折し、開幕から約1か月半の離脱を余儀なくされた。
MLBと選手会は、今大会に向けて保険会社「ナショナル・ファイナンシャル・パートナーズ(NFP)」と提携した。保険の内容は、WBCで負傷した場合の選手の保証年俸をカバーし、MLB所属球団に支払われるというもの。「ジ・アスレチック」によれば、野手は2年間、投手は4年間の負傷期間を補償対象とする。現行契約では、保険承認のため選手は3つの健康状態区分(慢性疾患状態・中間状態・低リスク状態)に分類され、慢性疾患状態とは複数シーズンにわたり60日間の負傷者リスト入りを繰り返したケースなどを指す。中間状態には2~3シーズンで10日間のIL入りを複数回経験した選手ら、低リスク状態には負傷歴がほとんどない、またはない選手らが分類されるという。
「高リスク」と判定された選手は保険加入を拒否され、結果として今回のWBC出場機会を逃すこととなった。侍ジャパンの大谷翔平投手も、今年のWBCで投球することを選択した場合、負傷歴により投球保険の加入を拒否されたであろう。
しかし、多くのファンやアナリストまでもがこの保険審査の整合性を疑問視し始めている。特にプエルトリコ代表のリンドーアと米国代表のバイロン・バクストン外野手という2選手の事例が指摘されている。
リンドーアとバクストンの違いは? プエルトリコ代表は「不運だった」
リンドーアは耐久性に定評があるにもかかわらず、オフシーズンの軽微な手術を理由に保険を拒否された。一方、バクストンは深刻な怪我の慢性的な経歴があるにもかかわらず、WBCの保険が承認された。MLBネットワークのアラナ・リッツォ氏は、「ファウル・テリトリー」でWBCレポーターのショーン・スプラドリング氏にこの件について質問し、「なぜプエルトリコのような国が最も大きな打撃を受けているように見えるのか?」と問いただした。
これに対しスプラドリング氏は、特定の国への偏りはないと否定した上で「結局は保険金額がすべてを決める」と強調。プエルトリコ代表は単に「不運だった」と述べた。バクストンは、負傷歴が長いにもかかわらず(11シーズンのキャリアで100試合以上出場したのはわずか3回)、比較的安価な契約(2026年の年俸は1500万ドル=約23億円)ゆえに今年のWBCの保険契約が承認されたということか。参考までに、リンドーアの2026年の年俸は3200万ドル(約49億円)となっている。
プエルトリコ代表チームの事態は深刻化し、ホセ・キレス博士(プエルトリコ野球連盟会長)は一時、主力選手への保険適用拒否を受けてプエルトリコ代表のWBC撤退すらほのめかす騒動となった。また、米スポーツ誌「スポーツ・イラストレイテッド」によれば、プエルトリコ出身の国際的ポップスター 「バッド・バニー」がリンドーアやコレアらスター選手の保険契約と契約金を買い取る申し出まで行ったが、それぞれの所属チームであるメッツとアストロズの双方から拒否されたという。
高額年俸のスター選手は、長い選手キャリアを持つ。ゆえに故障歴も多く、保険会社にとってはリスクが多い。結局、プエルトリコ代表は出場することになったものの、WBCが真の世界一を決める大会となるためには、まだ課題は多いと言える。
(笹田大介 / Daisuke Sasada)