母国チェコでは「誰も僕のことを知らない」 “大谷から三振”から3年…尽きぬ日本への感謝

  • 宮脇広久
    宮脇広久 2026.03.05
  • 海外
チェコ代表のオンジェイ・サトリア(左)とウィリー・エスカラ【写真:宮脇広久】チェコ代表のオンジェイ・サトリア(左)とウィリー・エスカラ【写真:宮脇広久】

朗希から死球を受けたエスカラ「死球を受けることが目標ではないからね」

 第6回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の1次ラウンドで、日本とも同じ「プールC」で戦うチェコ代表。その一員として、“朗希から死球を食らった男”と“大谷から三振を奪った右腕”が日本に戻ってきた。

 2023年の前回WBCでも、東京ドームで行われた1次ラウンドで日本と対戦し、2-10で完敗したチェコ。しかし、日本のファンの心に残るシーンがいくつかあった。4回の攻撃で日本先発の佐々木朗希投手(現ドジャース)から162キロの剛速球を右膝に受けたウィリー・エスカラ外野手は、痛みに耐えながら一塁へ歩を進めた。東京ドームのスタンドから拍手が沸き起こると、全力疾走して見せ、“無事”をアピール。さらなる喝采を浴びた。これには、佐々木が2日後にチェコの宿舎を訪れ、お詫びに2袋分のお菓子を手渡し、ハグをかわすエピソードも付いた。

 今回もチェコ代表に選出されたエスカラは、3月3日にサンマリンスタジアム宮崎で行われたオリックス2軍との強化試合に「8番・左翼」でスタメン出場。3打数無安打に終わったが、健在ぶりを示した。

「今回は野手の間にヒットを打って、ダイヤモンドを駆け回りたい。死球を受けることが目標ではないからね」とジョークを飛ばす。佐々木は今回、侍ジャパンには選出されなかったが、「残念だけれど、彼が昨年のポストシーズンで活躍し、腕にかなりの負担がかかったことは知っている。回復し、長いMLBシーズンに向けて準備する時間が必要だと思う」と思いやった。

 3年前の一件で日本にも“エスカラファン”が生まれたようで、カタカナで「エスカラ」と刺繍されたグラブを見せながら、「これは前回WBCの時に知り合った日本のグラブ製作会社の経営者が作ってくれたもので、彼とはその後も連絡を取り合っている」と笑顔を浮かべる。

カタカナで「エスカラ」と刺繍されたグラブ【写真:宮脇広久】カタカナで「エスカラ」と刺繍されたグラブ【写真:宮脇広久】

 昨年は米独立リーグのミルウォーキー・ミルクメンでプレーしたが、実は今年の所属チームがまだ決まっていない。「今回のWBCでの目標は、もちろんチームの勝利で、個人的にも勝利に貢献することだけれど、その活躍を見てチャンスを与えてくれるチームが現れたら、うれしい」と胸の内を明かした。3年前にはなかった口ひげを生やしている理由は、「年相応(27歳)に見えるように」だそうだ。

前回WBCの日本戦に登板したサトリア「僕にとって今までのキャリアのご褒美」

 一方、3年前の日本戦に先発し3回3失点だったのは、オンジェイ・サトリア投手。3回には大谷翔平投手(現ドジャース)からチェンジアップで空振り三振を奪い、一躍脚光を浴びた。

 普段はチェコの国内リーグでプレーしているサトリアは「チェコでは誰も僕のことを知らないけれど、日本人はみんな僕のことを知ってくれている。日本で有名になれたことはうれしい。僕にとって今までのキャリアのご褒美のようなものだよ」と感慨深げだ。

「3年前のWBCの後、SNSで日本の大学の若い投手が僕のピッチングやチェンジアップについて聞いてきた。いくつかアドバイスしたけれど、たぶん今は、僕より彼の方がいいピッチャーだと思う」と笑わせる。豊富に蓄えたひげは、3年前も今もトレードマークで「日本のファンが僕を見つけるための目印になると思う」とうなずいた。

監督は神経科医、試合中に負傷した選手を診断「年に1回くらいある」

 また、チェコの監督、コーチ、選手はたいてい、野球以外に職業を持っている。エスカラは工事現場監督、サトリアは電子技師だという。そしてチームを率いるパベル・ハジム監督は、神経科医でもある。

 3日のオリックス2軍との強化試合では、3番手で登板したルカシュ・フロウフ投手が打球を右側頭部付近に受け、緊急降板するアクシデントがあり、急きょハジム監督の診察を受けた。「脳に障害が起こらないか、確認すべきポイントが3つあるのだが、今のところはいずれも問題ない。明日以降様子を見たい」と“ハジム医師”。こうして試合中に怪我を負った選手を診断するケースは「年に1回くらいある」という。

 監督が医師となれば、選手はその分安心してプレーできそう。チェコ代表は今回のWBCでも、話題満載といったところだ。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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