最強・米国の寝首をかく「想像もできない」野球 ブラジル代表に見えた“野村克也の影”【マイ・メジャー・ノート】

  • 木崎英夫
    木崎英夫 2026.03.06
  • 海外
会見に臨んだブラジル代表の松元ユウイチ監督(右)と米国代表のアーロン・ジャッジ【写真:木崎英夫】会見に臨んだブラジル代表の松元ユウイチ監督(右)と米国代表のアーロン・ジャッジ【写真:木崎英夫】

米国代表の会見後、多数のメディアが退いた寂しい会場でブラジル代表の会見

 野球の世界一を決める第6回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の1次ラウンド、米国テキサス州ヒューストンで行われるプールB(アメリカ、イギリス、イタリア、メキシコ、ブラジル)の5チームが開幕を翌日に控えた5日(日本時間6日)、会場となるダイキン・パークで会見を行った。

 今大会一番の戦力を誇るアメリカに続いて会見を行ったのは、ブラジルだった。多くのメディアが退き満員だった会見場が一気に寂しくなったが、西武に所属するボー・タカハシ投手の屈託のない笑顔がその場を明るくした。同投手の横で、時々笑みを浮かべ頷きながら話に耳を傾けていたのが松元ユウイチ監督である。終始穏やかな雰囲気で進行していった。

 サンパウロ出身の松元監督は1999年にブラジルからの野球留学生としてヤクルト・スワローズに迎えられ、2002年に1軍に昇格。引退する2015年までヤクルト一筋でプレーした。引退後は、2軍の打撃コーチを経て、2020年から昨年まで高津政権を支え、今季からは池山監督の参謀役を務める。6日(同7日)の初戦で投打にスーパースターが居並ぶアメリカといきなりぶつかる。

 松元監督は、渡米前にこう語っている。

「うちは失うものはないというか。向こうが勝つのは当たり前と見られている。こちらはもう攻めるしかないので。簡単には点は取れないから、どうやって出塁して、どうやって選手たちを動かすか。動かしますよ、そこは」

ヤクルト時代の野村克也監督【写真提供:産経新聞社】ヤクルト時代の野村克也監督【写真提供:産経新聞社】

 この言葉で思い浮かべたのが、名将・野村克也監督である。ヤクルトの監督だった1990年代、巨大な戦力を持つ巨人にどうやって勝つかを突き詰めデータと感性を徹頭徹尾戦術に生かした「弱者の野球」を標榜し、抜け目のないチームに育て上げたのは多くの野球ファンが知るところ。

松元監督「“イメージも想像もできないこと”を選手たちに伝えています」

 松元監督がブラジルからヤクルトに来た99年に野村克也氏は阪神の指揮官になった。直接の接点はないが、ヤクルトに浸透する野村イズムから強敵に挑むヒントを得てはいないか――。

 水を向けた。

「もちろん、勝つ方法も含めて(ここまで)先輩たちからアドバイスをいただきましたし、その中で選手たちに伝えていることはあります。アメリカは世界一の代表チームだと思います。ただ、『本当にこういうことをやるのか?』と、そういった野球を目指しています。“イメージも想像もできないこと”を選手たちに伝えていますし、それを実戦でできるかどうかそれは別の話なんですけど。頭を使って野球をやっていきたいと思います」

 3度のア・リーグMVPを獲得し主将を務めるアーロン・ジャッジ外野手(ヤンキース)を筆頭に豪華な顔ぶれがそろうアメリカ。前日4日(同5日)にアリゾナで行われたWBC開幕前の最後の強化試合では、ジャッジ、ブレグマン、スミス、ゴールドシュミット、ブラクストンがアーチを描きロッキーズを粉砕。いい流れでヒューストンに乗りこんできた。

 一方、第1回大会から投手力の整備が課題だったが、昨季両リーグのサイ・ヤング賞に輝いた左右の先発ポール・スキーンズとタリク・スクーバルが加わり、大会史上最強の軍団が形成された。明日、対峙するのは、5年連続二桁勝利を挙げるローガン・ウェブ。

 下馬評に触れるのは野暮。横綱に挑むブラジルの“弱者の野球”を一つの楽しみにしたい。

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【マイ・メジャー・ノート】
 1995年の野茂英雄の大リーグデビューから取材を続ける在米スポーツジャーナリスト・木崎英夫記者による深堀りコラム。現場での取材からはもちろん、豊富な取材メモから送るエピソードも。コアなMLBファンのための記事を原則週1本配信。

○著者プロフィール
木崎英夫(きざき・ひでお)
1983年早大卒。1995年の野茂英雄の大リーグデビューから取材を続けるベースボールジャーナリスト。日刊スポーツや通信社の通信員を務め、2019年からFull-Countの現地記者として活動中。日本では電波媒体で11年間活動。その実績を生かし、2004年には年間最多安打記録を更新したイチローの偉業達成の瞬間を現地・シアトルからニッポン放送でライブ実況を果たす。元メジャーリーガーの大塚晶則氏の半生を描いた『約束のマウンド』(双葉社)では企画・構成を担当。東海大相模高野球部OB。

(木崎英夫 / Hideo Kizaki)

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