“歴史的一戦”で残酷過ぎる明暗 日本ゆかりの2人が…悔やむ豪州監督「大きな違いを」

勝利しマウンドに集まる韓国ナイン【写真:小林靖】
勝利しマウンドに集まる韓国ナイン【写真:小林靖】

複雑な順位決定ルールが試合をヒートアップさせた

■韓国 7ー2 オーストラリア(9日・東京ドーム)

 第6回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)1次ラウンドC組は9日、既に1位通過を決めていた日本に次ぐ2位通過をめぐって、韓国とオーストラリアが東京ドームで歴史的な大熱戦を演じた。結局、韓国が7-2で勝ち、4大会ぶりの1次ラウンド突破と準々決勝進出を決めたが、日本にゆかりのある2人の選手が、残酷なほど明暗を分けた。

「私の野球人生において、一番の試合です」。試合終了後、韓国のリュ・ジヒョン監督はこう述懐し感慨に浸った。1次ラウンドの順位決定ルールの複雑さが、なおさら試合をヒートアップさせた。

 8日終了時点で、3戦全勝の日本が10日のチェコ戦を残して1位通過を決めた。一方、2勝1敗のオーストラリア、1勝2敗の韓国、全4試合を終えて2勝2敗のチャイニーズ・タイペイに2位通過の可能性が残っていた。こうして、韓国とオーストラリアの運命の直接対決が始まった。

 韓国が勝って3チームが2勝2敗で並んだ場合は、当該チーム間の失点率(失点÷守備アウト数)、防御率、打率、抽選の順で決めることになっていた。

 その失点率を比べると、韓国がオーストラリアに2失点以内かつ5点差以上で勝てば準々決勝進出、オーストラリアは韓国に勝つか、4点差以内の敗戦で進出、チャイニーズ・タイペイは、韓国がオーストラリアに8得点以上かつ3失点以上で勝った場合に進出──という複雑さだった。

 そして最初のキーポイントは、韓国が6-2とリードして迎えた9回に訪れた。韓国が進出するには、もう1点以上取って「5点差以上」をつける必要があった。逆にオーストラリアは、この回さえ無失点で切り抜ければ、2大会連続の準々決勝進出が決まるはずだった。

敗北の瞬間、ベンチでグラウンドを見つめる豪州ナイン【写真:小林靖】
敗北の瞬間、ベンチでグラウンドを見つめる豪州ナイン【写真:小林靖】

豪州監督「しっかりグリップできていれば、なんということはなかった」

 1死一塁の場面で、MLBのジャイアンツでプレーする韓国の3番イ・ジョンフ外野手が放った打球が、相手投手のグラブを弾き、方向を少し変える。オーストラリアの遊撃手ジャリッド・デール内野手が捕球するも、慌てて二塁への送球を目の前に叩きつけてしまい、ボールは外野を転々……一塁走者を三塁に進めた。オーストラリアにとっては、この進塁が痛かったのだ。続く4番アン・ヒョンミンが中犠飛を打ち上げ、この時点で準々決勝進出の主導権は韓国に移った。

 オーストラリアのデービッド・ニルソン監督は試合後、デールの痛恨のエラーについて「痛かったですね。しっかりグリップできていれば、なんということはなかったが、ちょっとしたグリップミス(握り損ない)が、大きな違いを生んでしまった」と肩を落とした。

 デールは昨季、日本のオリックスで育成選手としてプレーし、ウエスタン・リーグで41試合出場、打率.297(118打数35安打)、2本塁打、14打点をマークしたが、支配下登録を勝ち取ることができず退団した。今季から在籍するチームが韓国の起亜タイガースというのは皮肉だ。

 そして、試合はその裏、オーストラリアの最後の攻撃でもう一波乱あった。1死一塁でリクソン・ウィングローブ内野手が放った痛烈なライナーが、右中間を襲った。これが抜けていれば、一塁走者が一気に生還し、「4点差以内の敗戦」を達成するオーストラリアに準々決勝進出が転がり込んでいたかもしれない。

 ところが、右翼のイ・ジョンフはスライディングしながら逆シングルでダイレクトキャッチ。母国の窮地を救った。東京ドームに詰めかけた韓国のファンは歓喜を爆発させ、“イ・ジョンフ”コールが沸き起こった。

 リュ監督も「あの右中間の打球にトライすることはなかなか難しいですが、さすがだと思いました。それくらい自信を持っていたということだと思います」と興奮を隠せなかった。ひょっとすると、韓国野球史に残る“ザ・キャッチ”だったのかもしれない。

 中堅でスタメン出場したイ・ジョンフが、この回から右翼に移っていたことも奇跡的だ。韓国の元スター選手で、日本の中日でもプレーしたイ・ジョンボム氏の息子。父の中日在籍時代に名古屋市で生まれたイ・ジョンフは“持ってる男”だった。

 一瞬のプレーで、英雄にも“戦犯”にもなりうるのが国際大会の恐ろしさだ。失意のデールにも、次のチャンスが訪れることを祈らずにはいられない。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

RECOMMEND