米国代表のスター選手は「チンタラしてベンチに戻らない」 4試合で47失点…苦しみ続けたブラジル代表が直面した現実【マイ・メジャー・ノート】

  • 木崎英夫
    木崎英夫 2026.03.11
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メキシコ戦で、コールド負けを喫し、マウンドを後にするブラジル代表のビトル・タカハシ(左)とガブリエル・カルモ【写真:ロイター】メキシコ戦で、コールド負けを喫し、マウンドを後にするブラジル代表のビトル・タカハシ(左)とガブリエル・カルモ【写真:ロイター】

ブラジル代表を率いた松元ユウイチ監督「正直、将来についてはまったくわかりません」

 2013年以来、3大会ぶりのワールド・ベースボール・クラシック(WBC)出場を果たしたブラジルは9日(日本時間10日)、イギリスに1-8で敗れ、4連敗で全日程を終えた。先発の沢山優介投手(ヤマハ)が2試合連続の4回無失点と光ったが、中継ぎ陣が8四死球を与え自滅。チームは4試合で計41四死球を記録し「47」失点。打撃陣もふるわず総得点は「6」止まり。次回大会の出場権は得られず、再び予選からの挑戦となる。

 0勝3敗同士で迎えたイギリス戦に完敗。松元ユウイチ監督は試合後の会見で、今後のチームについて問われ率直な思いを語った。

「正直、将来についてはまったくわかりません。ブラジルの連盟がいろいろと決めていくことですから。でも、全体的に選手のレベルは上がっていると思います。一方で、前回我々が出たときより出場チームの野球そのもののレベルも上がっていると感じました」

 WBC史上最強軍団のアメリカと初戦で当たり、15点を奪われた。続くイタリアそしてメキシコには連続完封負けを喫した。勝利を挙げられる可能性があったイギリスにも大差で敗れた。ブラジルで2週間の合宿を行い、最後はアリゾナでメジャー相手に強化試合をして臨んだヒューストンで、チームは苦しみつづけた。

「実は、こっちに来てまともに寝られた日ってないんですよ。午前1時くらいにベッドに入るんですが、あれこれと戦略が浮かんできて、そのたびに飛び起きてメモをするっていうのがずっとつづいています。ヤンキースとやる前日の夜は緊張もあったんでしょうね、ほとんど寝られなかったですね」

ヤクルト池山隆寛監督がもっとも嫌う「無理」の真意を汲み取ろうとする夜もあった

 データ班が収集した情報を参考にして、4つのプランを立て試合に臨んだ。しかし、投手陣が簡単に崩れていく中で、守備も走塁も含めたプランはすぐにバラバラになっていった。「美味しい食事も楽しめなかった」。苦笑する松元監督は、今季からヤクルトの指揮を執る池山隆寛氏がもっとも嫌う「無理」の真意を汲み取ろうとする夜もあったという。

「池山さんは昔からよく言うんですよ『無理なことはない!』って。それが結構、僕の中で残っているんですよね。なぜかって、言葉の響き以上に深い意味があると思っているからで。だって、池山さんは野村克也さんをすごく尊敬していますから。難しいことを最初から切り捨てないでよく考えてみなさいということなのかもしれません。そうしたら解決法が見つかるっていうことなんでしょうかね。池山さんには聞いたことないんです、まだ」

ブラジル代表の練習を見守る松元ユウイチ監督【写真:木崎英夫】ブラジル代表の練習を見守る松元ユウイチ監督【写真:木崎英夫】

 この話を聞いたあと、私も考えた――松元監督自身も多分、思うところだと考えるのだが――心技体そして大舞台での経験で他国の選手より劣る自軍の選手たちには、出されたサインはどんな意味があったのかと考える頭を持たなければいけないということ。一つのプレーに監督と理解を共有するという意識が選手の自立を促し、それぞれの哲学を確立する“野球脳”を創っていく。心も体もそして技術を兼ね備えた選手を育てるためのキーワードではないだろうか。

米国代表の選手たちの姿「そこをうちの選手たちが見て感じ取っていたかどうか」

 スター軍団アメリカ代表と戦った翌日、松元監督はこう言った。

「フィールドにいるスーパースター選手たちの攻守交代をベンチから見ていて、強いチームに間違いないなって思いました。チンタラしてベンチに戻ってくる選手が一人もいません。素晴らしかったですね。打撃をする、守備に入るっていう前にもう気持ちをその動きで作っているんですよね、あのチームは。そこをうちの選手たちが見て感じ取っていたかどうかなんです」

 付言すると、アメリカは6点をリードした中盤6回1死一、二塁から重盗を仕掛けブラジルにプレッシャーをかけている。松元監督は「1点を“もぎ取りにいく”隙の無さはさすがだなって思いました」と絶賛している。

 メンバー入り予定だったメジャーリーガー3人の登録は叶わず、戦力は整備できなかった。だからこそ松元監督は「無理」の真意を探した。

 4連敗で幕を閉じたブラジル代表を率いた松元ユウイチ氏は、翌朝、帰国の途に就いた。参謀役としてヤクルト・池山監督を支える日がまた始まる。

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【マイ・メジャー・ノート】
 1995年の野茂英雄の大リーグデビューから取材を続ける在米スポーツジャーナリスト・木崎英夫記者による深堀りコラム。現場での取材からはもちろん、豊富な取材メモから送るエピソードも。コアなMLBファンのための記事を原則週1本配信。

○著者プロフィール
木崎英夫(きざき・ひでお)
1983年早大卒。1995年の野茂英雄の大リーグデビューから取材を続けるベースボールジャーナリスト。日刊スポーツや通信社の通信員を務め、2019年からFull-Countの現地記者として活動中。日本では電波媒体で11年間活動。その実績を生かし、2004年には年間最多安打記録を更新したイチローの偉業達成の瞬間を現地・シアトルからニッポン放送でライブ実況を果たす。元メジャーリーガーの大塚晶則氏の半生を描いた『約束のマウンド』(双葉社)では企画・構成を担当。東海大相模高野球部OB。

(木崎英夫 / Hideo Kizaki)

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