他力での1次R突破も「その状況に自分たちを置いたのは自分たち」
第6回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)準々決勝、アメリカ対カナダが13日(日本時間14日)、米テキサス州ヒューストンのダイキン・パークで行われ、2大会ぶり2度目の優勝を目指すアメリカが5-3でカナダを破り、準決勝進出を決めた。
10日(同11日)のイタリア戦でまさかの敗北を喫したスター軍団。初の1次リーグ敗退もあり得る状況に追い込まれたが、翌11日(同12日)のイタリア対メキシコ戦でイタリアが勝利したため、準々決勝進出が決まった。手痛い1敗を喫したイタリア戦を前にして、マーク・デローサ監督が準々決勝進出を決めていると“勘違い”していたことが会見で判明し、醸した物議はくすぶり、ジャッジを擁する豪快な打線も期待通りの当たりが続いていないことから、地元メディアからは辛辣な論調が広がった。
一方のカナダは、6度目の出場で初めて1次ラウンドを突破。チームの士気は上がり、2月のミラノ・コルティナ冬季五輪のアイスホッケー決勝でカナダは男女共にアメリカに敗れていることから、「リベンジマッチ」と形容された。しかし、この日の試合は、野球というスポーツにある妙味に富んだ戦いであった。
試合前の会見でカイル・シュワーバーは、イタリアの勝利で準々決勝進出が決まって気持ちは上がったかを問われ、こう語っている。
「いいえ、ずっと同じですよ。普通に野球の試合を見ている感じでしたね。だって、その状況に自分たちを置いたのは自分たちじゃないですか。イタリア戦で私たちは試合に勝つために必要なことをやれませんでした。クラブハウスにいる一日、一日を当たり前だと思うことはありませんし、胸にUSAの文字を付けている日を当たり前だと思うこともありません。相手が誰であろうと勝てるということ。私が野球を愛している理由はそこです」
カナダはマイナーリーガー3人が登板…ウィット監督「初顔合わせで情報がない」
初回に3番アーロン・ジャッジが放った適時二塁打以外長打はなく、以後、7本の単打(うち4本が内野安打)に四球、拙守絡みで加点。2点差の終盤7回に迎えた一打同点のピンチを4番手デビッド・ベッドナーが無失点に抑え、緊迫した展開も最後は守護神メイソン・ミラーが3者連続三振で締め準決勝進出を決めた。
アメリカは今大会初めて本塁打ゼロ。ここまで2本を放っているジャッジはこの日の攻撃に短期決戦のポイントがあると説いた。
「この大会で優勝するためには、ホームランだけではとどきません。出ないときもありますから。そういうときはスモール・ベースボールをやらないと。いろいろな形で得点機会を作る必要があります。今日の初回がいい例です。ボビー・ウィットJr.が出塁して、二、三塁の形を作り、打席にはシュワーバー。ボールを転がせば1点です。こういうのがこの先大きくなると思います」
カナダのアーニー・ウィット監督は先発のマイク・ソロカからつぎ込んだ4投手で、マイナーリーガーを3人意図的に使った。理由は「初顔合わせで情報がない。私の奥の手だった」。アメリカにとっては想定外。しかし、ジャッジはその対処法を軽やかに説いた。
「一番大事なのはコミュニケーションだと思います。打席を終えた選手が次の打者に自分が何を見たかを話しているのを見ますけど、そういう小さなことが大きな意味を持つと思います。自分の直感とアプローチを信じてプレーするだけです。考えすぎないことです。同じ野球をしているわけですから。スカウティングレポートがあるかどうかは関係ありません。打席に入って打つだけです」
負ければ終わりの一発勝負で、アメリカは勝ち進むための方策を実行し結果に結び付けた。チームの牽引役ジャッジとシュワーバーは、即時的かつ刺激的な「感動」を与える華麗なアーチは描けなかった。が、数値化も可視化もできないチームの連帯感を引き出す責務をきっちりと果たしている。
マイアミに場所を移し15日(同16日)の準決勝を戦うのは、準々決勝で韓国を10-0(7回コールド)で下すなど、5戦全勝で快進撃を続けるドミニカ共和国に決まった。
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【マイ・メジャー・ノート】
1995年の野茂英雄の大リーグデビューから取材を続ける在米スポーツジャーナリスト・木崎英夫記者による深堀りコラム。現場での取材からはもちろん、豊富な取材メモから送るエピソードも。コアなMLBファンのための記事を原則週1本配信。
○著者プロフィール
木崎英夫(きざき・ひでお)
1983年早大卒。1995年の野茂英雄の大リーグデビューから取材を続けるベースボールジャーナリスト。日刊スポーツや通信社の通信員を務め、2019年からFull-Countの現地記者として活動中。日本では電波媒体で11年間活動。その実績を生かし、2004年には年間最多安打記録を更新したイチローの偉業達成の瞬間を現地・シアトルからニッポン放送でライブ実況を果たす。元メジャーリーガーの大塚晶則氏の半生を描いた『約束のマウンド』(双葉社)では企画・構成を担当。東海大相模高野球部OB。
(木崎英夫 / Hideo Kizaki)